第41話 朝デート
「先生、おはようございます。朝ですよ」
揺り起こされて意識が浮上してくる。なぜ女性の声が……?
「お、おはようございます!」
ハッと目が覚め、とりあえず挨拶を交わす。大丈夫だっただろうか。よだれ垂れ流しにしていたりテント張っていたりしなかっただろうか。
アユミさんの表情は通常営業だ。多少の粗相は気にしなそうではあるが。しかし飛び起きたものの頭が重く眠気が強い。
「早速、教会に行きましょう!」
そうですよね。それが優先ですよね。時刻は6時。仮眠としか言いようのない睡眠時間だ。
装備を整え、兜姿のアユミさんと迷宮街に向かった。
「すごい賑わいですね!」
「朝はいつも賑わってますね。何か食べて行きます?ってダメか」
「この兜じゃ食べれませんね」
「後で買って行きましょうか」
朝市の時間に誰かを連れてきたことはなかったなと思いつつ、キョロキョロと朝の賑わいを眺めているアユミさんを連れて教会へ向かう。
「レベル20ですけど付与術士は解放されませんでした」
「魔力向上ですかね」
「おそらくは」
レベル20アユミさんは迷いながらもこんな感じになったらしい。
武闘家 - 動体視力向上
シーフ - 敏捷向上
身体制御向上
盾士 - 頑強向上
挑発
盾強化
回復士 - 小治癒
小解毒
魔力向上
残りSP 1
「そろそろ敵が魔法使ってくることも想定しておいた方がいいかと思いまして」
盾強化は単純に盾が強化されるのもあるが魔法やブレスなどにも強くなるらしい。手先の器用さが増えるシーフの身体制御向上と、敵の攻撃を見切る武闘家の動体視力向上でタンク役として強化を図っていた。たしかに魔力矢は便利だが敵が使いだすと脅威だ。魔力向上を2個取っていると弾くことができそうではあるが試していない。
「盾士の4段目スキルは盾反射と不可視の魔力盾ですね。消費SP8だけあって強力そうです。武道家の2段目はバランス系の身体制御向上と飛拳。シーフの3段目は飛指とか詐欺師とか泥棒向けのスキルになってました」
「指が伸びる系ですか。スリとかも気を付けないとですね」
自分が取っていないスキルの先を知れるのはありがたい。どこかでメモっておきたいところだ。
「戦士とかの先も知りたいところですね。黒服達に取ってもらいますか」
「いいんですか?」
「レンタルする武器種を絞っちゃいましょう」
「なるほど」
顧客の要望は回復魔法だけであるならばそれもありといえばありか。余計な選択肢は与えないように情報操作するのはアユミさんが得意そうなのでお任せしておけばいいだろう。
「とりあえず朝飯を買いましょうか」
「そうですね」
視界が狭い兜のアユミさんを連れて朝市を周り、肉をナンで巻いたものを購入した。逸れないように袖を掴まれて歩くのはちょっとしたデート気分だ。振り向くと兜だが。
「では勝田さんが来るお昼まで200体チャレンジですね!」
「元気ですね……」
「しっかり睡眠取りましたから!」
こちらはあまり寝れなかったとは言えなかった。しかし、レベルアップした体は起きてしまえば割と元気だったので3層のゴブリン200体チャレンジを付き合ったのだが、何というか刺突剣の突きの正確性が増して凄味すら感じた。
楽しげにゴブリンの額の中央に穴を穿ち屠っていくアユミさんを見て、ステータスUPスキルいいなとつくづく思った。
はたから見れば猟奇的な光景だったが俺もすっかり慣れてしまったらしい。
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