第36話 防具購入
食べ過ぎたせいか久々に早寝早起きしてしまった。やはり柔らかい朝日で目覚めるのは良い。
スマホにはアユミさんから「本日の売上は1万円でした」とメッセージ。すっかり出動しなくても回っている。顧客を増やすか?でもそんな時間があるなら迷宮に潜りたいのも実情だ。何かあってからレベルを上げておけばと後悔するのは絶対に嫌だ。
そしてきっと何か起きるだろう。あんな垢にもそばかすにも塗れておらず、サラサラと脂ぎった髪ではなく、高性能下着に裏打ちされたプロポーションを持つ女性達を連れているのだ。確実に異世界の権力者なり強盗なりに絡まれる。現地基準からかけ離れて過ぎているのだ。
「変装方法も考えないとな……」
フードにマスクでもちょっと厳しいと思う。4人も連れていると余計目を引くだろう。目だけでもある程度の美貌が想像できてしまう上に、返って想像力をかき立てる気がする。だからと言ってサングラスするのもまた目立つ。
コンビニで唐揚げを買い、昨日の残りのカレーを解凍して唐揚げを載せる。至福。
もう少し現地の事情とか権力構造とか知りたいところだが、焦ったところで言葉が分かるようになるわけでもない。
「本でも売っていればなぁ」
向こうの字を理解する方が早そうかもと、本が売ってないかそれとなく市場を見ていたがまだ目撃できていない。字が記載されているのは換金所の巻物マップくらいだったので字を理解したところで現地人の識字率低すぎて読めない可能性の方が高そうなのだ。
とりあえずノアさん分の革の服を仕入れるかと昨日収集した魔石の入ったリュックを背負い迷宮街へと向かった。
こちらも天気が良く、空の青と雲の白のコントラストが眩しかった。やはり時間は向こうとリンクしている。
魔石を換金がてら8層の下の地図がないか身振り手振りで聞いてみたが首を振られた。やはりここまでのようだ。
貫頭衣型の革の服を3着購入する。丸めてリュックに詰め込めるとはいえ、これだけで結構な荷物だ。そして乱雑に商品が積まれている防具屋で目についたのは革の兜だ。軽く被る帽子のようなものから目だけにスリットが入ったアーメットヘルムのようなものもある。革製で厚みもありそれなりに重い。しかしこれならサングラスマスクフードより現地に馴染みやすい気がする。自分は着けたくないが。
内部があちこち紐でしめて装着するものならサイズの違いはある程度なんとかなるだろう。そもそも同じものが売っていないのでバラバラと4つかき集め、生首を4つ抱えるように店主に全部でいくらかジェスチャーで聞いてみる。
「ソフ」
「ソフ!?」
「ラーイ」
確か銀貨50枚。防具高い。なんとなくジェスチャーで革の服も買ったので安くしてやった感を出してきたので吹っ掛けてきたわけではないのだろう。仕方なく銀貨50枚を支払い、紐で繋げてもらった兜たちを担いで自宅へと向かった。こんな大荷物でうろうろしたくはなかったのだ。
防具ばかり担いで迷宮に潜る姿を奇異の目で見られてしまったのは致し方ないだろう。
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