第34話 既知との遭遇
しばらく走ると男達の話し声が聞こえてきた。まさかこの短時間で盗賊と遭遇するとは……もしや張られていた?いやしかし、それほど緊迫した声色ではない。どちらかと言うと普通に話しかけているような雰囲気だ。
走る速度を上げ、声の方に向かうと十字路にいた。すでに刀の鯉口を切っているマイさんとその後ろに新人2人。相対するはLEDランタンのお客さん第1号のむさい冒険者達だ。
どうやらナンパ失敗らしい。
「マイさん、ストップ!」
「先生っ。よかった〜。話通じないから斬っちゃうところでした〜」
どこの辻斬だ。ふんわり言えば済むもんでもない。
「えーと……。
こんなこともあろうかと仕入れていたLEDランタンをリュックから取り出す。煌々と灯るLEDランタンが張り詰めていた緊張感をほぐすかのようだ。
「マジデー」
語彙がないのでとりあえず知ってる単語を並べつつ敵対の意思はないことを示す。マッチョな男達はチラチラとマイさん達を見ながらも戦闘態勢を解除してくれた。
うーん。やっぱりなぁ……。
革の服は着けているが変装はしていない。迷宮とはいえ1層でビギナー風の昼間で盛ってないとはいえオリエンタルな美女達がいれば親切心か下心で声をかけてしまうのだろう。特にあのチャラ男。
動きやすい服装ということでマイさんはジャージ、後ろの2人とアユミさんはスウェットなのだが……なのだが、なんだかエロいのだ。
それでなくとも身体のラインが出る服装は異世界ではエロい服扱いのカモンOKハウマッチな職業ととられてもおかしくはない。パッと見だと革の服を着ていないスレンダーなノアさんだけだがよく見るとマイさんの革の服の胸部装甲は重厚だし、ノアさんもアイリさんもスタイルがいい。迷宮街では滅多にお目にかかれないレベルのとても風変わりで異質な一団だろう。
ひと言で言えば目立つ。今までも目立っていたけど余計に目立つ。
「ラマダー」
チャラ男にLEDランタンを握らせて、大きく手を振りなから女性陣を引き連れ離脱する。ラマダーラマダー。
「迷宮内では無駄な刃傷沙汰になる可能性があるので、他の人間に遭遇しないように注意しましょう」
「はぁい。ごめんなさい」
天然辻斬、放置危ない。相手がかわいそう。
「みなさんも周囲の音と匂いは常に確認するようにしてください」
いつもの索敵ルーティンはみんなにも慣れてもらおう。シャンプーもなるべく無香料にしてもらいたいくらいなのだ。いい匂いなのだ。
その後のパワーレベリングと職業解放はすんなりと進む。アユミさんの統率力がなせる技なのか新人2人も文句ひとつ言わない。途中でアユミさんアイリさんペアとマイさんノアさんペアに分かれて狩りもやってもらった。異世界入りの引率役を任せてもいいかもしれない。
5層のボスもなんなく突破し、マイさん、アイリさん、ノアさんはレベル10に到達した。
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