第33話 5人パーティ


 固定パーティの話は今決めなければならないことではないのでとりあえず棚上げし、迷宮へ潜る準備を整える。アユミさんに方向性をどんどん追い込まれている気がしないでもない。そしてこの女性の人数……。


「盗賊ホイホイだなぁ」


「あまり街を出歩くのはよくないかもしれませんね」


「斬り落としちゃいましょ~」


 自分が筋肉ムキムキな外見なら少しは抑止力になるのだろうか。レベルで身体能力が変わるから外見重視にはならなそうではあるが。そういえば先日の暴漢達は魔法を使うとグラマンと恐れていたような気がする。魔法使い風の外見の方がいいのか?


 新規のボーイッシュなノアさんと大人しめのアイリさんには武器を選んでもらう。槍と鈍器くらいしか余っていないが。革の服も後1着しかない。


「私は不器用なのでこのトゲトゲ棒がいいです」


「じゃ自分は槍っす」


「革の服はアイリですかね。とりあえず槍は2人とも持ってくださいね」


 アユミさんがアイリさんに前に使っていたバックラーと革の服を着せていた。固定パーティの話をしていたがアユミさんの中ではすでに役割が決まっているのだろうか。


「固定パーティの話がありましたが2人のジョブとか役回りって決まっているんですか?」


「はい。やはり前と後で盾が欲しいところなのでアイリにはアタッカーよりの盾職、ノアには魔力向上を取ってもらって後衛にと考えています。魔道士になれるといいんですけど」


 やはりすでに腹案があった。しかし大人しそうなアイリさんが前衛なのか。


「アイリはストレスというかヘイトが溜まっているので前がいいんです」


 ストレスは分かるけどヘイト?アイリさんの表情が陰る。


「お店でSNSもやらされているんですけど捨て垢で粘着されたりしてまして……」


「言いやすそうな相手に執着して上から目線でものを言ってくる変な人によく絡まれるんですよアイリは」


「人格否定が妙に心に刺さって生きるのがつらいです」


 重っ。小さな声でとつとつと語るアイリさんは人生に迷っているようだ。


「ばっさりやっちゃえばいいんですけどね」


 軽っ。でもなんとなくアユミさんが2人を連れてきた理由がわかった。


 マイさんは天然だとして、恐らくこの2人はキャバクラに向いていない。アユミさんはゲーム的感覚で捉えてそうだ。考えてみればレベルアップで身体能力が上がればできる仕事が増える。引っ越し屋や搬入屋とかの肉体労働でも大活躍だ。潰しがきくようにするためかメンタル鍛えてキャバクラで通用するようにかは分からないがゲーム脳で組みやすしと判断したに違いない。


「では行きましょうか」


 自分が考えてもしょうがないことは放置し、皆準備も終わったようなので解決策であるだろう迷宮に入ることにする。


 狭いトイレの入口を5人で抜けるのは無理だったのでアユミさんマイさんを先に連れていき、ノアさんアイリさんを2回に分けて連れていく。


 魔力の適応はノアさんが重め。小治癒で回復した。


「あ、アユミさん向こうでMP使ってもらえます?」


「はい。魔道士解放条件ですか?」


「そういえばMP消費して迷宮に入ると魔力が意識しやすかったなと」


「なるほど。行きましょう。マイさんここはお願いしますね」


「おまかせ~」


 ひらひらと手を振るマイさん達を残し、アユミさんと日本に戻り、小解毒を2回使ってもらうとアユミさんは顔面蒼白だった。


「大丈夫です?」


「一気に使うと厳しいですね……」


「迷宮に戻りましょう」


 アユミさんを連れて迷宮に戻るとマイさん達が見当たらない。


「なるほど。これが魔力……濃いですね」


「あとは操作しようとしてみてください。動かしたり折り畳んでみたり。できませんでしたけど」


「やるだけやってみます」



 この短時間で拉致られたりはしないだろうが、マイさん達を探して駆け出した。

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