第17話 女性同伴
昼過ぎに自宅に戻り、スマホを見ると随分とメッセージが溜まっていた。犯人はアユミさんだ。レベルが上がる世界に行けたなら早くレベルを上げたくなるのはゲーマーの性なのかもしれない。気持ちはちょっと分かる。
読み進めていくと「指名料払いますので!」とか夜のお店じゃないんだけどなと思ったが、なるほど異世界に行くことにお金を払う人はそれなりにいそうだ。出入りに自分が必要なので結局は付き添いになってしまう。それなりにお金を取るべきなのかもしれない。
「午後から大丈夫です」と返信すると「これから伺います」と即返信がきた。
とりあえず防具を外し、コンビニで昼飯を買ってきた。全速力で逃げ帰ったため銭湯にでも行きたかったがすぐ来るらしいので我慢だ。シャワー?トイレとセットで犠牲になってますが何か?
家賃月5.2万円。コンスタントにそれだけ稼げるようになったら同じマンションの別の部屋を借りよう。左隣も空いていたはずだ。光熱費入れて6万円か。この部屋にはロッカーを置いて武器防具も預かる月1万円の冒険者会員が6人いれば成り立つ。できれば12人で2部屋分。意外といけそうな数字だがスポーツクラブを考えるともっと高くてもいけそうな気がする。
チャイムが鳴る。アユミさんだ。
「おはようございます」
「おはようございます!」
濃いグレーのスエットにポニーテール。動きやすい服装でやってきたアユミさんは香水も無しだ。なんだか夜と違って可愛らしい。
「運動するかもと思ってすっぴんで来ちゃいました」
「そういえば香水も注意するの忘れてましたがよかったです。化粧しなくてもあんまり変わんないですよ」
「マツエクもしてますし!」
まつ毛をエクステンションしているらしい。長い。
「あんまり見ないでください!」
「すいません。それで今日は教会でレベルアップと装備の購入くらいでいいですかね?」
「レベルも上げれませんか?」
やはりそう来たか。顔が本気だ。
「まずは迷宮街に行って装備を整えましょう」
「はい!お願いします!」
回復士も考えるとレベル10までは上げた方がいいのは確かだ。しかし、ゴブリン、スライムはいいとして猫ちゃんは防具がないと危険すぎる。武器も槍は欲しい。
「では」
手を繋ぎトイレを潜る。昨晩は力強く握られていて分からなかったが随分と柔らかな手だ。
蜘蛛を蹴散らし迷宮街へ。
街へ出た途端ざわりと空気が変わった。向けられる視線は俺ではなくアユミさんだ。
うーん、アユミさんが目立つ。ちょっとまずいかもしれない。
「すいません。甘く見てました。ちょっとまずいので引き返しましょう」
「えっ、どうしてですか?」
「人目を引きすぎています。変なのに絡まれる前に戻ります。行きますよ」
「えっ、はっはい」
迷宮に戻り、誤魔化すように2層へ向かう。
「ど、どうしたんですか?」
「アユミさん美人過ぎなんですよ。あちらの平均からすると」
文明が未発達なあちらではそんな白い肌、艶やかな髪で整ったお顔の女性なんて滅多にいないことと、支配体制や法が分からなく下手すると力尽くで拉致されてもおかしくないことを説明する。
「日本みたいな平和なところじゃないんですよ」
「どうしましょうか」
「うーん。マスクにフードですかね」
ゴブリンの手足を刀で切り飛ばし、アユミさんがメイスでとどめを刺しながら、ぼったくり商店スタイルを提案する。
「3つ上がりました!」
「じゃ次はスライムです」
我々は流れ作業のごとく、迷宮を駆け足で進んでいった。
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