第11話 効率化できました


 昨晩は遅かったのでゆっくりめの起床。今日はちょっと思い付いたことがあり、マッピング用のボードを持って迷宮街の換金所へ向かった。


 迷宮の地図を売っていないか確認したかった。6層は広い。全部マッピングしていたら何日もかかりそうな雰囲気だったからだ。これまでマッピングしたものを見せれば地図が欲しいのは何となくでも理解してもらえるはず。そしてギルド的役割だとするなら多分マップがある。


 とりあえず昨日の猫ちゃん魔石12個を銀貨12枚に換金してもらう。


「ラマダー」


「あーちょっといいですか?」


 ふくよかなご婦人受付嬢を呼び止める。


「ンンー?」


「これあそこの迷宮のマップなんですけど」


 1層のボードから6層のボードを重ね、1層分から見せていく。迷宮の方向を指差して迷宮であるアピールも忘れない。


「ラーイ」


「5層はボスだからマッピングしてないけど、これ1層で2層、3層、4層ね。それで6層のマップが埋まってなくて……」


 ゆっくりと気にせず日本語で語りかける。


「ここの地図ありません?」


 マッピングが半分も終わっていないだろう6層の空白部分を指差して聞いてみる。


「ンンー」


 ボードを見比べていく受付嬢。


「ライライ」


 何か納得いったようだ。いけるのか?


 奥に引っ込んでしまったがきっと大丈夫そうな予感だ。



 羊皮紙の巻物を手にやってきた受付嬢に俺は勝利を確信する。


「マンデー」


「まんでー? ああ銀貨1枚ね」


 情報料の銀貨を差し出すと巻物を開いてくれた。


 これあれだな。見せるだけか。


 見せてもらったのは縦の一本線に分岐らしき枝が所々生えてる木のような図だった。スタートからゴールまでを縦線で、他の分岐の先は完全省略と割り切り方が凄いがシンプルだ。ゴール以外の分岐道に価値なんてないと言わんばかりだ。確かに今までも何もなかった。


 6層マッピングボードに階段らしきものへの分岐と主要通路を書き足す。左上の6を意味する文字っぽいものもだ。


「この下のもあります? ああいや地図が合っているか確認してからでいいか。ラマダー」


「ラマダー」



 思ったより上手くいった。


 これが7層へのマップなら大分時間が短縮できる。換金所に何層までマップの在庫があるのか分からないがマップがある階層なら大幅に効率アップだ。


 迷宮1層から5層に抜け6層へ。


「右、真ん中、右、左……」


 ある程度覚えてマップを仕舞う。昨日のようなミスはもうしない。槍を構えて警戒して進む。


 猫ちゃんをチクチクと槍で屠りながら、幾度も分岐をマップ通りに進むこと30分。あっさりと7層への階段にたどり着いた。


「……合ってるな」


 意外と近かった。これまでにマッピングに費やした数時間が虚しく感じるほどだ。


 気を取り直して、威力偵察と洒落込もう。



 俺は階段を静かに下っていった。



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