第12話 7層デビュー



 第7層。戦闘音なし。匂いは……少しだけ雑巾の匂いがするようなしないような。温度も変わらず。


 右手に槍を構え、帰りに迷わないように左手法で進む。後で7層のマップも入手したい。


 3つめの分岐も左に行くと、向こうからフラフラとやってくる影が見えた。しかも2体。だが動きは遅い。


「……ゾンビ?……ミイラかな」


 頭部にだけボロ布を巻き付けた人型、体は魚の開きのように喉から縦に切り裂かれてカラカラに干からびている。なかなか醜悪だ。どす黒く尖った爪も見るからに毒や麻痺などの状態異常系。


魔法矢ボルト


『魂強度上昇しました』


 魔法矢ボルト1発で頭部を爆散し、あっさりと1体が沈む。弱点は定番の頭部ぽいな。


「ハァッ」


 のっそりと近づいてくるもう1体の頭部に槍を突き刺してみるが穴が空くだけだ。斬るのには向かない槍を投げつけると開きの内臓があった部分に突き刺さった。


 刀を抜く。居合斬りは手を切りそうなのでまだ試していない。相手の体長はこちらよりやや低い160cmくらい。首の高さを横一閃というのも意外と難しい。


「……難しく考えなくていいか」


 緩慢なミイラを尻目にバックステップからのサイドステップで背面に回る。


 深く踏み込み、袈裟斬り。


 肩から脇へと抜ける斬撃に片腕と頭部が切り離されたミイラはしばらく動いていたがやがて小さく萎み、魔石になった。


 魔石の大きさは猫ちゃんと変わりがないように思える。ただ動きが緩慢だし複数なので狩りやすそうだ。怪我を負う危険性は猫ちゃんの方が上だろう。何体まで同時に出るか次第ではあるが……。


 魔石を拾い、更に分岐を左へと慎重に進んでいく。


 次に出会ったミイラも二人組だ。


魔法矢ボルト魔法矢ボルト


『魂強度上昇。職業、忍者を解放しました』


「ほんとすぐレベル上がるな。それにしても忍者か……」


 おおよそのRPGで強ジョブの忍者のスキルは楽しみだ。




 その後も危なげなく10体屠り、もう1レベル上げた俺は迷宮街にやってきた。もちろん教会で合掌だ。



『あなたの魂強度は17です。職業技能はマニュアルオペレーションで選択してください。残りスキルポイントは5です』



 農民 - 持久力向上(必要1SP)

 武闘家 - 動体視力向上(必要2SP)

 シーフ - 敏捷向上

       身体制御向上 - (必要2SP)

       暗視向上 - (必要2SP)

 戦士 - 強撃(必要2SP)

 武士 - 迅動(必要2SP)

 回復士 - 小治癒

       小解毒

         中解毒 - (必要4SP)

         診断

           魔法薬作成 - (必要8SP)

       魔力向上

         中治癒 - (必要4SP)

         解呪 - (必要4SP)

 槍士 - 飛突(必要2SP)

 魔道士 - 魔法矢

       魔力向上 - (必要2SP)

       属性付加1 - (必要2SP)

 忍者 - 隠形(必要2SP)

 残りSP 5



 どれどれ、忍者の隠形は5秒間視認されにくくなるアクティブスキルだ。対人向けかな……。取りたいかといえば取りたいけどパッシブの方が優先度高いかな。

 回復士の中治癒も欲しいが迷宮で全治1ヶ月の負傷を負う時点で詰んでる気もする。中解毒か魔道士の魔力向上か。もう1レベル欲しい。悩ましい。


「神様、賢者とかビショップになりたいです」


『該当の職業は解放済みです』


 ……魔法系上位職ないのだろうか。


「魔力向上でお願いします」



 魔道士 - 魔法矢

       魔力向上

         魔法壁 - (必要4SP)

         2重発動 - (必要4SP)

       属性付加1 - (必要2SP)

 残りSP 3


 継戦能力を考えて魔力向上に振った。魔法壁はフィールド設置型のアクティブスキルだ。縦横2m厚さ30cmまで可変、3分間まで維持なんだけど水平にも置けるので強い。壁って水平に置けていいのか?あー空中には設置できないのかな。それでもトラップとして優秀すぎる。

 2重発動は発動キーワード短くして連射すればいいと思ったがどうやら2重発動したものはMP消費がないようだ。これも弾幕張れて強そう。


 しかし、SPは足りない。



 換金所で換金と7層の地図を見せてもらい、銀貨5枚の晩飯を食べたところで日本の自宅に戻ることにした。


 夜の飲食店経営者の勝田さんには「今晩は大丈夫です」とメッセージだ。

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