17話「仲間」

「......アルマジロ?」


「ちげーよ!俺は岩の精霊だ!」


ラトの(おそらく)相棒は、どう見てもちっさいアルマジロだった。

ちょっとゴツゴツしてるけど。

てか精霊ってこんなぽんぽん登場していいようなやつだっけ?


「この子は岩の精霊のペトラです。今回は家にお留守番してもらっていたんですが、いつもは一緒に行動しています。」


「ラト、『今日は素材を集めるだけだから大丈夫だよ』って言って俺の同行を止めたんだ。.....で、この人に助けられたと。」


「......はい。すみませんでした。」


「岩の精霊、か。その後ろの穴もお前が開けたのか?」


「ああ、そうさ。なんたって俺は岩の精霊だからな。そのくらい朝飯前だ」


ラトとペトラの背後に開いた穴の周りには小さな石ころが散乱している。

大方、砕いたとかそんな感じだろう。

しかしそんな程度でこのペトラとかいう岩の精霊の実力は分からない。

正直、1人の方が良いのだが......


「はぁ......仕方ない。とりあえずペトラとラトの実力を見せてくれ。」


俺が知ってる範囲ではラトは俺と同じくらいの実力、まだかなり弱い状態だ。

だから、いつ強敵にあっても渡り合える、または安全に逃げることが出来るくらいの実力がペトラに無いといけない。

俺が勝手に冒険に出て勝手に死ぬのなら自業自得だが、それに他人を巻き込むなんてことは決してあってはいけない。


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シルビスの町の隣にある森。

ペトラの実力を見せてもらうため、ここで戦ってもらうことにした。


「アルラスさん、あまり激しく出しすぎると魔力切れになるので、気をつけてくださいね。」


「大丈夫、分かってる」


まぁ『超魔力』があるので尽きることはそうそう無いはずだが。

とはいえあまり出しすぎると強い魔物が出てきそうなので前より少し少なめを意識する。


「準備はいいか?」


「いいから早くしてくれ。......というか、弱い側が相手を試すってどういう状況?」


「弱いからだよ。......それじゃ、いくぞ」


ペトラにそう言い、全身の魔力に意識を向ける

体内を血潮と共に流れる魔力、それを体表から放出する。

暫くそうしていると、辺りの空気が重くなってきた。

そして、背後に1匹の気配。

前と同じ、狼の魔物だ。

その気配が段々と増えていく。

ちなみに俺とラトの2人はペトラが作った魔力バリアで守られているので襲われる心配はない。

気配が10を超えた。

しかしまだ襲ってこない。

更に数十体増えたところで狼達が一斉に襲いかかってきた。

うち5体くらいはバリアに突進して弾かれている。

バリアが壊れた時のために一応錆鉄の聖剣シリウスを構えてはいるが、どうやら必要なさそうだ。

残りの数十体は全てペトラへ距離を詰めているいるが、あいつ曰く「安心して見ててくれ」との事なので大人しく見守っている。


「あれ、本当に大丈夫なのか? 結構数多いぞ」


「大丈夫です、ペトラは強いんですから。」


ラトはペトラをかなり信頼しているようで、心配する素振りも見せない。

......と、そんなことを考えていたら狼のうち1体がペトラに飛びかかった。

他数十体は周りを囲っている。まず逃げられない......!


「お、おい大丈夫なのか!?」


「ふふっ、大丈夫ですって。」


ペトラは飛びかかる狼を一瞥し......


――勝負は一瞬で決まった。


ペトラが飛び上がり、飛びかかった狼を地面に叩きつける。

水面の波紋のように地面が揺れ、地中から鋭利な岩の杭が無数に飛び出した。

ある狼は岩槍に貫かれ、またある狼は撥ね飛ばされ。

たった一撃で全ての魔物が葬り去られた。

バリアに集っていた狼も衝撃波か何かで吹っ飛んでいった。


「どうだ?......って、おーい?」


俺が唖然としている間にペトラが戻ってきたようだ。

相変わらず、先程の戦闘からは想像できないほどのちびっこい小動物フォルムだ。


「すげーな......これが精霊の力ってか」


「だから言ったじゃないですか、ペトラは強いんだって。」


やけに嬉しそうにラトが言う。

よほどペトラのことが好きなのだろうな。

......それにしても、圧倒的な力の差だった。

正直、嘗めていた部分もあったのでそれも相まってかなり驚いた。


「......ってあれ、さっきの狼やら岩やらは?」


ふと先程戦闘が繰り広げられていた場所を見ると、狼の魔獣も岩の杭も跡形もなく消えていた。

あるのは先程の戦闘で折れた木の枝くらいだ。


「あの岩杭は地中の魔素を固めて具現化した物なんだ。だから時間が経つと霧散して消える。」


「じゃあ、狼達は? 前に戦った時は死体が残ってただろ」


「魔物は魔法や魔素構造物(メリド)によって活動を停止させられると魔素同士の結合が壊されて空気中に散るんです。前回も私が最後の一撃を与えた魔物は消えていましたよ。」


「なるほど......ってか、魔物って魔素の塊だったのかよ」


「はい、簡単に言えばそうですね。とはいえ、具現化してメリドとなっているので性質は魔獣とさほど変わりませんが。」


「ほぇ〜......っと、とにかく、だ。ペトラの実力は俺の想像を遥かに超えてた。というか俺がこんなに偉そうに話せるような相手じゃなかった。......俺としても強力な仲間がいるとありがたい。冒険仲間になってくれるか?ラト、ペトラ?」


「はい、よろしくお願いします!」


「おう、よろしくな!」



そんな感じで、1人と1匹(?)の冒険仲間が出来た。

......ところで、俺は何を目標にこの世界で冒険すればいいんだろうか。

アニメやラノベでは魔王ぶっ飛ばすのが王道だが......。

まぁ今のところはこの異世界を楽しむとしよう。

目標を決めるのはその後でも遅くは無いはずだ。

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