15話「精霊」
「どうしたの? 急に固まって」
俺はかつてないほどに動揺していた。
いつから見えていた?
というか、本当にさっきまで見えていなかったのか?
自分の記憶、認識、そういったものを信じられなくなってくる。
なるほど、これが「狂気」ってやつか。
頭が理解しようとすると同時に理解を拒絶している。
とりあえず落ち着こう。
ここは異世界だ。俺の常識は通用しない。
そう考えると、一旦落ち着くことが出来た。
「す、すまん。少し取り乱した。」
「そっかそっか。大成功ってわけだ。」
俺が一生忘れられないような恐怖を体験したというのに、何故かこいつは少し笑いながらそんなことを抜かす。
「さっきから見る感じ、君は精霊の知識が浅そうだったから驚かせると思ったんだ〜。中々にいいリアクションだったよ!」
声も明らかに高くなっていた。
クソ......あの声は演出だったって訳か。
「アルラスさん。精霊は基本的に、人間の目では認識できません。光は届いているんですが、何故か認識できないんです。なので会話中に姿が見えるようになると先程のようになるんです。」
「な、なるほど……」
「で、君たちは私に何の用があるのかな?」
「ああ、それはだな......」
俺達はこれまでの経緯を精霊に話し、街へ送って貰うよう頼んだ。
だが……
「それは無理な相談だね。」
「なんでだよお前のせいでこうなったんだろうが」
「だって、精霊は人間に手を貸しちゃいけないってルールがあるから。ルールを破ると罰を与える魔獣か神獣が出てきて、下手すると消されちゃうんだよ。」
「まじか……それは困っt
「それは神話の話です。騙されないでください」
「おいコラ」
「あははは、やっぱり君は面白いねー!」
「いいよ。街に送ってあげよう。ただし、条件を呑んでくれるならね。」
「条件って……?」
「簡単だよ。この森にある、すごく美味しいフルーツを取ってきて欲しいんだ。」
「んなもんねーだろいい加減にしろ」
「それが、あるんだなー。君たちに食べられないように見えなくしてただけで普通に木に実ってるよ。」
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探してみたら本当にあった。
なんなら昨日寝たとこの周りの木にも実っていた。
「ほら持って来てやったぞ、街に送ってくれ。」
「私からも、お願いします......!」
「もちろん。精霊は約束を破らないからね。」
「町は向こうだよ、じゃあね〜」
精霊は自分の後ろを指さし、そのまま消えた。
さっきと同じく、いつの間にか消えていた。
全く気味の悪い種族だ。
「本当に、あの方向へ進めば出られるんでしょうか......」
正直俺も半信半疑だが、とりあえず今は信じるしかない。
それをラトに伝え、俺達は精霊が指さした方向へと歩き始めた。
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