13.5話「気配察知」
肉を食べてから再び眠り、異世界生活3日目の朝が来た。
埋めておいた火種を掘り出してストレージに入れておいた肉を焼きながら、「気配察知」の練習をする。
今度は一気に溢れないように、指先や足先から徐々に範囲を広げていく。
魔力の放出が身体全体まで広がると、体が空気と同調したような感覚と共に周囲を感じることができるようになった。
"周囲を感じる"というのはかなり曖昧な表現だが、実際そうなっている。
俺を中心として半径10メートルくらいの地形、木々、草、その他諸々の形、デジタルな感じで言うなら3Dデータのようなものが直感的に感じられるのだ。
ここにこのくらいの太さの木がこう生えていて、枝はどうだとかこんな凸凹だとか、そういう情報がさも見ているかのように感じられる。
なるほど、これはかなり役立ちそうだ。
「んぅ......アルラスさん......?」
ラトが起きたようなので、気配察知を中断して声をかける。
「おっ、起きたのか。おはよー」
「おはようございます......あ、いい匂い……」
「昨日の肉を焼いてるんだ。もうすぐ焼けるぞ」
「わかりました......アルラスさん、気配を感じとる練習をしてたんですか?」
「え......なんで分かったんだ?」
「わかりますよ、あんなに魔力を出していたら。」
「魔物が湧くほどの濃さではありませんでしたが、相手が油断していても気づかれるような出し方でしたよ?」
「まぁ、寝てたラトが起きたくらいだからな......」
「まぁ、アルラスさんは初心者なので仕方ないですが。」
「とりあえず、朝ごはんを食べましょう......お腹がすきました......」
「お、おう。そうだな」
そうして俺たちは焼いた肉塊という重すぎるかもしれない朝食を食べ始めた。
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「うっぷ......朝から焼肉はやっぱきつかったか......」
「そうですか? 私は美味しかったですけど」
「すまん、俺はしばらく動けそうにないわ......」
「あはは......アルラスさんって案外少食なんですね〜」
「普通くらいは食える自信あるけど、朝から肉塊は食ったことねぇよ......」
「私もそういえば朝からこんなにお肉を食べたことはありませんね......種族の違いでしょうか?」
「それしか考えられねぇよな〜」
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「よしっ、もう動けるぜ!」
「はいはい。それでは探索続行としましょうか。」
「ああ。......ところで、昨日の"気配"ってのはどんな感じだったんだ?」
「どんな感じと言われましても......何かがふわふわ集まっている感じとしか言いようがないです......」
「なかなかに曖昧だな。まぁ気配なんかそんなものか。」
立ち止まって話をしていても仕方が無いので、「気配察知」を始めて歩き出す。
さっきより出す量を少なくし、かつ効果が失われないように......
「......あれ?」
「......? どうしたんですか?」
「いや......さっきやった時より地形の把握がぼやけててな。「気配察知」ってこんなものなのか?」
「気配察知......ああ、あれですか。正式名称は『魔力探知』です。そもそもこれは地形の把握は頑張ってもそうそうできないものなので、気にしなくていいですよ。」
「というか、昨日教えたばかりなのにぼんやりでも地形が把握できるって凄いですね......」
「そうなのか? さっきは細かい凹凸まではっきりわかったぜ?」
「え!? それって割と高難易度の『魔素融和』ですよ!?」
「魔素融和......? それってそんなに難しいのか?」
「はい。魔力の操作に長けた人が扱う、『魔力探知』の上位スキルです。魔力を放出と同時に周囲の魔素に馴染ませることで身体と空気の境目をぼかして、『魔力探知』よりも更に高い精度で周辺の状況を把握できるらしいです。」
「確かに、空気と一体化した感覚はあるな」
「なら魔素融和ですね......凄いですアルラスさん。」
「とは言っても俺そこまで魔力の操作が得意じゃないはずだぞ?」
「そうなんですか? ……魔力の保有量が多い人は常に微量の魔力が漏れているから比較的習得しやすいらしいので、それでしょうか?」
「だな。魔力量は自信がある」
そんな雑談をしながら、俺たちは森の探索を進めた。
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