6話「スタートダッシュは決めれない」
「ストレージ」の中から開けたゲートから飛び出すと、目の前に大きな岩があった。
いや、岩ではないな。それは地層をそのまま切り取ったかのような大きな立方体だった。
「これって...」
そう、そこはこの世界で初めて地面を踏んだ場所だった。
まあ、何も考えずにゲートを開いたんだから、一番記憶に残っているこの場所につながったのは当たり前だろう。
それにしても、本当にここまで思いどうりになるとは。
異世界、案外楽勝なのかもしれない。
「それじゃ、いよいよ異世界冒険譚を始めるか。まずは街に行くところからだ!」
再び「ストレージ」を開き、中に入って街に行きたいと強く念じながらさっきと同じようにゲートを開く。
そしてその中に飛び込み、俺は異世界の街を目にする。
......と、思っていたのだが。
「あ、あれ......?」
ゲートが開いたのはさっきストレージを開いたのと全く同じ場所だった。
行ったことのある場所じゃないと開けないのか、もしくはその場所を精確に思い浮かべないといけないのか。
それを知ることは俺にはできなかったが、一つだけ知れたことがあった。
「このままじゃ、街に行けないぞ...」
街に行けないということは、ギルド(あるのか知らんが定番だしあるだろう)に行けない。
それはつまり、暫くの間情報や住処、食料の確保が極めて困難になることを示唆している。
このままではやばい。
とりあえず食料だけは確保しなければ。
やろうと思えば「再構成」を使って小さな家は作れるかもしれないが、なにせ今のレベルだと魔力消費が多すぎる。
完成までには相当な時間が必要だろう。しかもその時間の大半は魔力切れでぶっ倒れて何も出来ない。
普通に作ろうにも知っている場所の中で唯一建築材料が手に入るあの森には、もう近づきたくはない。
出れるのはわかったが、精神的にもう無理だ。
しかも。
ぐるるるる...
「腹減った...」
一日中動き回っていたせいで腹が減った。
食料確保をしたいが、生憎まわりにいるモンスターはスライムだけだ。
「再構成」で作れるかもと思ったが、栄養素は習っていてもそれが何の原子からできているのかなんて知らない。
もちろん、それが分からなければ「再構成」で食料を創るなんてできない。
「もう一度行くしかないのか...」
木があるならそれを利用して暮らす動物や、もしかしたら実を実らせる木もあるかもしれない。
背に腹は変えられない。
俺は、もう一度迷いの森に行くことを渋々決めたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます