5話「迷いの森と新たな発見」
あてもなく草原を歩き始め、どれだけ経っただろうか。
俺は森の中で、迷子になっていた。
方向音痴ではないし、むしろリアル迷路とか頭の中でマッピングできるくらいには記憶力も方向感覚も良いはずなんだが、なぜか先程から、同じ場所をぐるぐると回っているような気がする。
「進んでも進んでも同じ景色...いい加減飽きたな。」
そして、ふと後ろを見た時、俺はとんでもないことに気づいた。
「え...まじかよ...」
俺の真後ろ、歩いてきたはずの方向には道はなく、ただただ木が生えているのみだった。
そう、俺が迷っていたんじゃない。
俺は、「迷わされていた」のだ。
こういうのは異世界もので森で迷った時のテンプレだ。
おそらくどこかに俺をこんなめんどくさい事にしやがった元凶がいる。
そしてそいつを倒せば出られるっていう仕組みだ。
「おい、森の主さんよお。おれをなめてもらっちゃ困るぜ。」
ラノベを読んでいればこんな展開、いくらでも見つかる。
だが俺は、それを読む度に疑問に思っていた。
森の中を歩いて出るのが出来ないなら、なぜわざわざ森の中をさまようのだろう、と。
飛んで上に出れば万事解決ではないかと。
というわけで、今から飛ぼうと思うんだが...
「どうやって飛ぼうか...」
そう、転生特典オンリーでそのほかは少量の金と1着の服しか持っていない俺は、もちろん飛ぶ手段を持っていない。
「再構成」の中に含まれる「モータス」を使うことも考えたが、殆どスキルレベルが上がっていない今、そんなことをしたら魔力切れでそれこそ死を覚悟する羽目になる。
「正攻法で行くか...まあどうにかなるだろ。」
とはいえ、森の主がどこにいるのか分からない。
「ステータス」を使えば...いや、自分より格上のステータスは見れないんだったな。
そういえば自分のレベルって見てなかったな。
そう思った俺は自分のステータスを開き、レベルを確認した。
「レベルは...2かぁ。さっきのスライムで上がったって感じか。」
これじゃ森の主のステータスなんて見れるわけが無い。
一応やってみるが、やはり何も見えない。
「どうしたもんかな...」
森の主に怯えているのか、モンスターの1匹もいないのでレベルを上げようにも上げることが出来ない。
木に登ることも考えたが、この森の木はおかしな形になっていて、とてもじゃないが登れそうにない。
......と、しばらくなやんでいるとあるひとつの可能性を思いついた。
もし。もしもの話だ。「ストレージ」の先がゲームのインベントリのような概念そのものではなく、大きな亜空間につながっているとしたら。
そして、中からでも出し入れ口を開けるとしたら。
それはもはや、テレポーテーションゲートの役割をになってくれるのではないだろうか。
少し冗談混じりに考えたが、こんな世界だ。案外有り得るかもしれない。
目の前に「ストレージ」のゲートを出現させ、手を突っ込む。
今まではただ取り出したいアイテムを取り出すだけで、特に何も考えていなかった。
「聖剣シリウス」を思い浮かべて手を握る。
握ったところにはしっかりとシリウスの柄があった。
そのままそれを中で動かす。
すると...
カン...カラン...
「...!?」
何かにぶつかった。
空間は...ある!!
一旦シリウスを離し、腕を引っ込める。
そして今度は頭をその中に突っ込んだ。
「おお...おお!」
そこには、絶えず色が変わり続ける空間と、
聖剣や聖鎧といった「ストレージ」内のアイテムがあった。
そして第2ステップ。
出し入れ口を開ける。
「開け!!」
腕も突っ込んで前に向け、「ストレージ」を開ける時と同じようにする。
すると。
「あ...あ...」
「開いた!?」
俺の目の前に、大きな円形の穴が空いた。
夢中で飛び込み、重力の干渉しない亜空間を手足で掻いて進み、穴に飛び込む。
そして俺は.....
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