7話「迷いの森、再び」
「ゲート」
右手を前に突き出し、「ストレージ」を開きながら「ゲート」と唱える。
やっぱゲートとして使う時は、こうでなくちゃな。
そして迷いの森の前にゲートを繋ぎたいが、ゲート、門と言うからにはくぐる形がいいな。
亜空間に開く入口と出口のゲートを近づけるのは、案外あっさりできた。
......そして。
「色々やって先延ばししたけど、結局腹は減ったまま。森には行かないとな...。」
......その時がやってきてしまった。
だが嘆いていても仕方ないよな。
というか、俺は仮にもチート持ちの異世界転生者だ。
異世界に来て最初のダンジョンなんて、俺にとっては街道同然だろう。
「待ってろよ、俺の食料!」
「ゲート!」
森のダンジョンなんて、どうせ初級の初級。
採集クエストになるほどたくさんのキノコやら薬草があるはずだ。
............
しかし、現実はそんなに甘くなかった。
いくら異世界転生者と言ってもまだレベルは1、スキルも弱体化の影響で使い物にならないからもはや俺は雑魚だった。
本来なら草原などのフィールドでちまちまレベル上げをしているような強さなのだ。
そして俺は今。
「まずい...なんも見つかんねえ」
森の中で空腹をレベルMAXにしていた。
このままでは異世界生活一日目にして餓死してしまうぞ。
ああ、こんなことならひとつに絞って最強アイテムかスキルを貰っておけばよかった......
なんて、落胆している時に限ってイベントが起こるのがラノベの定番だ。
そして案の定、どう考えても主人公キャラな俺の元にイベントは舞い降りた。
「おいおい......こういう時は良いイベントが相場だろうがよ......」
しかし俺の前に降り立ったイベントは悪いイベントだった。
この世界は定番は守っても忠実ではないらしい。
ーーー俺の前には、大量の蠢くキノコが群れていた。
明らかに普通ではないキノコたちの中には、赤や黒、緑といった単に色がおかしいだけののものから、不気味な模様や形をしたものもあった。
そしてその中に一際大きいのが1匹。
他のキノコと同じ丸っこい形をしているが、サイズはその10倍はあり、俺を軽く見下ろしている。
おそらく、いや間違いなくこいつがこの群れのボスだろう。
......逃げるか?
いや、逃げても多分追いつかれる。
......なら、戦うしかないか。
今の俺の強さで勝てるだろうか。
いや、逃げられないなら、勝てるかどうかじゃなく、勝つしかない。
戦うと決めた俺は、ストレージから「聖剣シリウス」を取り出した。
相変わらず、発掘された青銅剣のような見た目をしている。
「かかってこい!俺が相手だ!」
そんなテンプレのような台詞を叫びながら、俺はキノコの群れに向かって突進した。
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