第2話 ミスの代償
「おい!この発注書作ってクライアントに送ったのは誰だ!」
「えっ?あっ私ですけど…。」
「またお前か…今クライアントから連絡があって…届いた商品のサイズが違うらしい…発注書のサイズ今すぐ確認しろ!」
「そんな…ちゃんと確認したんですけど…。」私は焦った…。はっ!間違えてる…
「間違えてました…私のミスです…すみません…。」
「なんでちゃんと確認しない?あれほど確認は大事だと言ってるだろ!…まったく…」
と部長は頭を抱えている…。
私はとにかく部長に謝るしかなかった…。
「私…今からクライアントに謝ってきます…」
「おい、まて!」
部長の声は聞こえたけど私は会社を飛び出した。
沿道を走っていると車がクラクションを鳴らし私の少し先で止まった。
「乗れ!」
部長だった!
「でも…。」
「早くしろ!車の方が早い!俺も行くから乗れ!」
私は一瞬戸惑ったが迷わず助手席へ!
とりあえずまず呼吸を整えなきゃ…
なんとか落ち着いてはみたものの…部長に何を話せばいいのか…頭を整理していた…
「部長…あの…すみま…」
といいかけたがそれをさえぎって
「謝るのは先にクライアントのほうだ…。今は起こってしまったことをどうするかが先決だ。もうそれ以上言うな。」
と一喝された…。
私はそれ以上何も言えずいたたまれない空間の中クライアントの会社に着いた。
私達はクライアントの社長の応接室へと通された。
「困るんだよね…わが社にとって多大な損失だ…。どうしてくれる…?」
「大変申し訳ございませんでした…。」
と部長が深々と頭を下げた…。
私も同時に頭を下げた…。
「社長…この度は大変ご迷惑を…申し訳ございませんでした…私のミスなんです…。」
私はここの社長が苦手だ…。
50代半ばのスラッとした体型のちょっとクールな社長…。
前に1度打ち合わせした時…しつこく食事に誘われたことがあり…それ以来苦手…。
「君の会社はこんな女子社員に大事な案件をまかせているのかい?それとも他にまかせている仕事があるのかな?」
「どういう意味でしょうか?」
部長はいつもとちがう冷静な表情で切り返した。
社長は不敵な笑みをこぼして
「このままでは私の会社は大損失だ。 ひとつ提案なんだが…そこのお嬢さんが 食事の接待をしてくれるのなら…この件は なかったことにしてもいいですよ 。」
これって…まさか…俗にいう枕営業?ってやつ?ほんとにあるんだ…。
でもこの件は私の失敗…
だから自分でなんとかしないと…
わがまま言ってる場合じゃない…
分かりました…と返事をしようとした瞬間…
「あいにくそんな社員はうちにはおりませんので… 。」
と部長が遮ってくれた…。
「お前は1階で待ってろ!後は俺と社長で話をする。このものは 帰らせますので …いけ…。」
社長はやれやれとあきれた表情をしていた…。
それから15分ぐらいして部長は1階に降りてきた 「行くぞ。」の一言だけいって車で送ってくれた
「本当にすみません …私 …私…やっぱり…」
絶対に怒鳴られる…と思いながら私はその言葉を待っていた。
でも…
部長は頭をポンポンと撫でてくれた…。
「 誰にでもミスはある…これぐらいのミスは俺が何とかしてやる! だから お前は気にせずこれからもちゃんと仕事しろ !わかったな!」
それだけ言った…
いつもの部長とは思えぬ返答に戸惑いながらも…今の私にはそれを実感する余裕は全くなかった…
社長と何を話したのかは言わないままに…
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