アリシア編第4話 エクスとの誓い

 アリシアを連れ去られ、エクスは苛立っていた。

 今が好機だと思った彼らは、一斉にエクスへと襲いかかった。襲いかかる彼らを、エクスは特大大きな爆発で木っ端微塵にして吹き飛ばした。


「名士四十一魔法師にたった百人でか。一斉検挙だ」


「やってみろよ」


 エクスへ向け、遠距離の攻撃魔法が降り注ぐ。だがそれをエクスは爆発魔法をぶつけて防ぎ、そこで生じた爆煙の中を駆けて遠距離魔法を打ってきた者たちを爆発で吹き飛ばした。


「あと何人だ」


 既に倒れる何人もの倒れた黒焦げの人体。

 それら周囲に転がった黒焦げの人体を増やすため、エクスは爆風で吹き飛び、襲いかかってきようとした彼らへ襲いかかる。


「今度は俺からだ。名士四十一魔法師に、いや、この俺に喧嘩を売ったことを後悔しろ」



 その頃、アリシアを連れて逃げている白狼は急いでボスのいる地下のアジトに向かって走っていた。


「奴相手でも百人も相手にすれば十分くらいは稼げるだろ。それだけ持てばボスのもとまで奴を引き連れていけるーー」


「白狼ぉぉぉぉぉおおおお」


 爆風に乗り、エクスが既に追いかけてきていた。


「おいおい嘘だろ。百人も相手にして一分も持たないのかよ……」


「アリシアを、返せ」


 エクスは白狼の頭上まで迫ってきていた。エクスはそこから白狼の顔面へ蹴りを入れるが、それは煙のようになって消えた。白狼は偽物であったらしい。そしてアリシアも偽物であった。


「くそ……くそぉぉぉぉぉおおお」


 エクスは地面をは爆裂する拳で叩いた。地面には亀裂が走る。


「エクス、こっちだよ」


 ビルの屋上には白狼が立っていた。

 彼を見つけた瞬間、エクスは爆風に乗り、再び白狼へ飛びかかる。しかしそれも偽物であった。また現れるも、それは偽物だ。

 次に現れた白狼も、その次に現れた白狼も、全て全て偽物であった。そのまま誘き出され、最後の偽物を倒した時、そこには二本の剣を構えている男が立っていた。


「お前は?」


「お前らが潰したがっている金狼會のボスだよ。白狼が少しは弱らせたちは言っていたが、そういうわけでもないようだな。白狼の奴、はめたのか」


「そんなことはどうだって良い。アリシアは、どこだ」


「知らねーよ。そんなことより自分の命より他人の命を考えているのか。お前、後悔するぞ」


 ボスはエクスの腹へ剣を突き刺した。だがそれはかわされ、ボスの剣は掴まれた。そのまま爆破され、剣は熱によって溶け、刃はなくなった。


「これが……」


 もう一本の剣を突き刺そうとするが、その剣を握る手は爆発によって黒焦げになり、剣を握る力が消失する。


「お前に用はない」


 エクスはそのままボスの頭を掴んだ。エクスの手からは巨大な爆発が放たれた。地面すらも黒焦げにする威力。

 ボスはその地面に同化して転がる。


「早くアリシアを……」


 だがそこは金狼會のアジト、何百という数の金狼會のメンバーがそこには集まっていた。


「千を越えるな。これは……」


 金狼會のメンバーは一斉にエクスへと襲いかかった。

 それに怖じ気づくことなく、エクスは容赦なく爆発を浴びせる。


「そこを退け。俺はアリシアをーー」




 現在、その島は包囲されていた。魔法ギルドの金色魔法使いーーカシウス=ライデンを筆頭とする魔法使い。

 彼らはその島で暴れている金狼會のメンバーと衝突していた。

 彼らがこの島に来ていることが予想外であった白狼は、島から出ることもできず、島の中でひっそりと隠れていた。


「どうして……あと一日早ければ……」


 あと一日、そんなわずかなチャンスを失い、白狼は後悔していた。

 そんな彼の前に、カシウスが現れた。


「お前、金狼會の第二支會の會長、白狼だろ」


「ちっ。お前に構っている暇なんてないんだよ」


 白狼は自分自身を白煙で囲み、逃げようとするが、煙がまるで意味をもたないのか、白煙の腕へ目掛けて雷撃が放たれた。

 しかしそのまま白狼はアリシアを抱えたまま逃亡する。


「人質がいるせいで攻撃ができない」


 カシウスは白狼を追う。

 だが何人もの白狼が視界には映り、その隙に本物の白狼を見逃した。なんとか白狼は地下水道に逃げられた。


「早く……逃げないと……」


 だが腕が雷撃によって撃たれ、アリシアを抱える力すらも失っていた。

 その時、天井が崩落し、そこから血まみれのエクスが転がってきた。


「エクス!?なぜここに?」


 エクスとともに降りてきた男が、エクスの頭を掴み、持ち上げた。


「パープル。お前も来ていたのか」


 パープル=スコーピオン、後に最悪の犯罪者として名を残している罪人である。


「白狼、深傷を負っているのか。哀れだな」


 腕を押さえ、苦しんでいる白狼を見てパープルは嘲笑う。パープルは白狼のもとへ近づき、腹を素手で貫いた。


「さいなら。白狼」


 白狼は腹を押さえながら、水が流れている場所へ倒れ流された。

 その時、アリシアは薄目を開けた。そこで目の前に広がっていたのは、頭を掴まれ持ち上げられているエクスの姿であった。


「エクス……さん……」


「なんだ知り合いか。なら目の前で殺してあげないとな」


 エクスの心臓を、パープルの手が貫いた。エクスは血を吐いた。

 その時、アリシアの目は漆黒色に染まる。刹那の間に剣を抜き、パープルへ斬りかかろうとした時ーー


「アリシアは、死なせない」


 エクスは力を振り絞り、パープルの腕を掴んだ。その後、巨大な爆発が地下水道に炸裂する。アリシアは爆風によって吹き飛び、水辺の中に沈み込んでいく。


「エクスさん」


 なんとか水辺から出てきたアリシアは、黒焦げになって倒れているエクスのもとへと向かった。

 その時既に意識が薄れており、死にかけの状態であった。

 何度も呼び掛けるアリシア声で目覚め、エクスはアリシアの手を掴み、言った。


「エクスさん……」


「アリシア。お前は絶対に生きろよ……。こんな俺が言えた義理でも、ないけど……さ……」


「エクスさん、死なないで……死な……ないで……」


 アリシアは目に涙を浮かべ、必死にエクスへと呼び掛けた。しかしエクスの意識は薄れるばかり。


「エクスさん……」


「アリシア、お前は強い奴だ。だからこれからお前は人を救い、助けられるような人になれ……」


「……分かりました。私は……エクスさんのような人になるよ。だからエクスさん、天国から私のことを見守っていてください」


 そう言い終わった時、既にエクスは死んでいた。

 死んだエクスの亡骸の上で、アリシアは泣きじゃくっていた。


 その後、一連の事件が終了し、名士四十一魔法師のフラッシュ=インウィディアという女性がアリシアと死んでいるエクスを見つけ、駆け寄った。


「少女よ、ここで何があった?」


 アリシアは涙を拭い、彼女へ言った。


「お願いです。私を名士四十一魔法師にしてください」


 それから数年、彼女は名士四十一魔法師にまで成り上がった。

 至上最年少の名士四十一魔法師として。

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