アリシア編第3話 拐われた少女
現在、魔法ギルドにて、十七名の魔法使いが集められていた。
彼らの前に立って話をするのは、魔法ギルド金色魔法使いーーカシウス=ライデンであった。
「現在、金狼會と呼ばれる犯罪組織がシダレ島を拠点として勢力を拡大している。このままでは歯止めが利かなくなる。今ここで奴らを仕留めなければいけない。ここに集まっている我々で金狼會を討つぞ」
カシウスたちはシダレ島にいる金狼會を討つため、動き出そうとしていた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
そこはシダレ島。
その島の海岸で修行を終えたエクスはアリシアとともに繁華街を歩いていた。
しかし繁華街を歩いている時、アリシアがと離れ離れになってしまっていることに気付き、急ぎ周囲を探しに繁華街を走る。
それも知らず、アリシアは初めて見る繁華街を楽しげに歩いていた。そんな彼女の前に、白狼は悪そうな笑みを浮かべて立っていた。
アリシアはその男が危険であることに気付き、咄嗟に剣へ手を伸ばすも、
ーー殺しはなしだ。
エクスに言われたことを思い出し、アリシアは剣から手を離した。しかし周囲には武器になるようなものはない。
居敷が逸れたアリシアの懐へ入り、白狼はアリシアの腹へ手を当てる。
「白狼式忍法
白い煙が手から放たれ、それがアリシアへと絡み付く。アリシアは身動きがとれなくなった。
「少女よ、君は確かに強いけど、魔法に対抗する力がない。それにその海岸での修行の様子だと魔法も使いこなせていなかったみたいだし、所詮は子供だね。怖がって損したよ」
煙の中で暴れるも、アリシアはそこから抜け出せない。
「大人しくしておいてくれよ。君を逃がしたらさ、ボスに怒られちゃうから」
白狼はアリシアの顔へ手をかざす。手からは煙が放たれ、その煙を吸ったアリシアは急激な睡魔に襲われる。彼女はもう眠りについた。
「さてと、早くボスのもとにでも行きましょうか。アリシア、君はそのまま眠っていると良いよ。君を大切に思っているであろうエクスが死ぬ様を見たくないのなら」
金狼會のボスの前に、アリシアは連れてこられた。
彼女はまだ眠っており、起きる気配はなかった。
「その少女が我々の仲間を殺したのか?」
「ええ。そのようです」
「この弱そうなちっこいガキがか。世も末だな。まさかこの程度のオチビさんが我々に牙を剥くとは。で、エクスは?」
「その少女を利用してエクスを誘き出そうと思いますが、構いませんか?」
「ああ。相手は名士四十一魔法師だ。今この島にいる全勢力を使っても構わん。とにかく奴を殺せ」
「了解いたしました」
そう言い、白狼はアリシアを連れ、その場を後にする。
アリシアをお姫様抱っこで抱える白狼は、眠っているアリシアの寝顔を優しく見守り、そして呟いた。
「結局のところ、少女よ、君は選択を間違えた。あの時俺たちに関わらなければ、君はわざわざエクスを殺す引き金にはならなかったということだ。君とエクスがどういう関係なのかは知らないが、結末はもう変えられない」
それから一時間、白狼はアリシアを抱えたままある廃工場に百人ほどの仲間を率いてある人物を待っていた。
程なくして、彼はやってきた。
両腕には怒りからか、脈がびんびんに際立っており、既に爆煙を半身から出し、鋭い目付きで白狼を見ていた。
「その少女を返せ」
「返せ、か。随分と偉そうだね。君さ、今どっちの方が身分が上か分かっているよね」
エクスへ怖じ気づくことなく、白狼はエクスへと言い返した。
「お前たちはここで俺を殺すつもりだ」
「大正解。だからこうやって君をここに呼んだのさ。本当に一人で来てくれてありがとう。そしてさようなら」
その瞬間、エクスを囲むようにして立っていた男たちは一斉にエクスへと手をかざす。
「これだけの数に、それも全方位から攻撃を受ければ君は死ぬ。お前ら、エクスの首を取った奴は俺の側近に任命してやる。だからとっととそいつを殺れ」
一斉にエクスへと男たちは襲いかかる。エクスは自身の体を爆発で覆い、襲いかかってきた者全員をその爆風で吹き飛ばした。
「今の内に逃げさせてもらうよ。君と戦う覚悟なんてないからさ。せめて君が苦しんでくれるように罠でも作って待っているから」
エクスが大勢に襲われている間に、白狼はアリシアを抱えて街へと駆け出た。
「じゃあね」
「アリシアぁぁぁぁあああああ」
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