アリシア編第2話 狙われたアリシア
エクスのもとでアリシアは一晩を過ごす。
初めての家であろうと、アリシアは難なく眠りについた。そんなアリシアへ恐怖を抱きつつも、盗賊を襲った事件を
「なあアリシア、お前はどうしてこんな選択をできたんだ?」
しかし眠っているアリシアの返答はない。
血まみれになって盗賊を殺しているなどとは思えるはずもない優しい顔で眠っているアリシアを見て、エクスはただ戸惑うばかり。
眠れぬまま、朝を向かえた。
気持ち良さそうに起きるアリシアの横で、エクスは目の下にクマができている。
「アリシア、もう起きたか」
「もうって、今は朝八時ですよ。健康な成人男性が起きているのは普通ですし、それに私が起きていても別に特別不思議はありませんよ」
「そ、そうだな」
「ところでエクスさん、今日は私を鍛えてくれるんですよね。なら教えてください。戦い方を」
アリシアは満面の笑みでエクスへとそう言った。
エクスは断るわけにもいかず、眠たい目をこすってエクスとともに海岸へ出た。
「アリシア、この木の枝を剣だと思い、俺にかかってこい」
「木の枝でですか?」
「強い者は、どんなものでも武器にしてしまうんだよ。それにだ、常に剣が身近にあるとは限らない。だからたとえ木の枝であっても、即興で使いこなせるようになれ」
「分かりました」
アリシアは木の枝を構え、エクスへと飛びかかる。エクスはアリシアの木の枝を必要最小限の動きでかわした。アリシアはエクスへ攻撃を与えられず、翻弄されるばかりであった。
「アリシア、まだまだ弱いな」
「エクスさんが強すぎるんだよ。あんな簡単に攻撃なんて避けられないよ」
アリシアは嘆くようにそう呟いた。
「今日は攻撃が当たるまで修行は終わらないぞ」
それから一時間、結局アリシアは一撃も与えられずに修行は終わった。アリシアは汗だくになり、力尽きた。
「エクスさん、強すぎですよ」
「アリシアも
「本当かな」
「本当だよ。アリシアが攻撃を与えられるようになるまで俺は側に居続けるから。だから安心しろ」
そう言って、エクスはアリシアの肩を優しく叩いた。アリシアはエクスへと心を許し、打ち解けつつあった。
アリシアはエクスに懐いていた。
それから二日、いつも通りアリシアとエクスが海岸で修行をしていると、それを見つけた一人の男が息を殺し、その様子を遠くから観察していた。
そしてアリシアを見て、気づいた。
「あの少女、やはりこの前俺の仲間を襲った野郎か。それにエクスが一緒とは……。早くボスに報告を」
そう言い、男は焦りながら地下へ続く階段を降り、薄暗い道を通ってある部屋へ着いた。
そこにはふかふかの黒ソファーに男が一人座っていた。彼は頭に蠍の入れ墨を入れており、タバコを口にくわえていた。
「
「そ、それが、先日仲間を大量に殺害した少女を見つけました」
「そういえばそんなこともあったな。で、なんで仕留めてこなかった?」
「その少女が名士四十一魔法師のエクス=プロージョンと一緒にいたからですよ。恐らくあの少女はエクスの仲間か何かで、きっと俺たちを潰しに来たんですよ」
「ちっ。なるほど。エクスがか」
男は考え込むや、タバコを捨てて立ち上がった。
「おい白狼、俺たちゃ犯罪組織
「では……」
「ああ。まずは少女を拐い、エクスを誘き寄せろ。そこで奴を殺す。そうすれば全てに決着が着くだろうからな」
「分かりました。今すぐに少女を拐ってきます」
白狼、そう呼ばれた男は再びあの海岸へ向かった。
白狼が過ぎ去ったのを見ると、男は呟く。
「エクス=プロージョン。ここで貴様は終わりだ。名士四十一魔法師をここで殺し、世界へ我々というものを刻もう。金狼會、本格的に動くぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます