135話
パレードは解散となったが、多くの住民は屋台を楽しんだり吟遊詩人の歌を聞いたりして楽しんでいる。メインイベントが終わっても祭りの如く夜まで盛り上がるのだろう。
そのころ王城では褒賞式が行われていた。
大臣が名前を呼び今回の功績を発表したのち褒賞が伝られる。
アスランの褒賞は既に決まっていたのでスムーズだったが、欲のないアスランに一同感服していた。
その褒賞の中で二人ほど注目を集めていたのでご紹介しよう。
「ヒイロ・グラス前へ」
「ハッ」
「この度の戦にて指揮官・軍師として参加し、策略にて数万の魔物を殲滅し、数々の軍略にて窮地を救った功績を称え、金一封とグラス領奥地の新たな領地を与える」
貴族達の拍手と共に話し声が聞こえる。
「グラス領は安泰だな」
「ああ。知略に長けた軍師が長男なんてヤバイだろ」
「それにグラス領はそのまま長男が継ぐとして、新たな領地を与えるってことは領地拡大だろう?凄いな」
「まあ今回の功績は計り知れないからな」
そんな声を聞いてヒイロはどんどん青ざめていった。
さらにはもう一人の褒賞内容が話題となっていた。
「エリーナ・リベリア王女前へ」
「この度の戦にて奇跡の世代の貴族兵を集結し援軍しとして窮地を救った。また王女自ら最前線に向かいリベリア王国の威信を見せた功績とし王より褒美を与える」
その内容が読まれた後にベルトラン王が口を開いた。
「王女に褒賞と聞いて皆も何が望ましいか疑問だろう。なので本人に問うことにしている。エリーナ、褒賞として何か欲しい物はあるか?」
「はい、ございます。私の意思で結婚の相手を選ぶ権利を下さい」
ベルトラン王の顔は険しくなる。
「この国の王女として言っている意味がわかっているのか?」
「はい。この国の王女として、結婚とはこの国に利益をもたらすことが前提だと。だからこそ条件を付け加えさせていただきます。この国に利益をもたらす相手ならば私の意思で結婚する許可をいただきたいと思っています」
ベルトラン王もこの言葉には驚愕している。
しばしの静寂は辺り一面に広がった。
「ゴホン、こんな結末は予想だにしないな…面白い。今やリベリア王国の顔にもなっているお前が簡単に受け入れられると思っているのか?」
「思っております。何故なら私の想い人はアスラン・アーバインなのですから」
貴族達はどよめき始めた。
それもそのはず、本人を目の前にしての盛大な告白をしているのだから。
言われた本人でさえも戸惑っている。
しかし、ベルトラン王は平然と質問する。
「なるほど、国としては確かに有りだな。ただブラックドラゴンをも倒す男をお主一人で支えられえるのか?お前にそれ程の器があるのか?」
「私の技量では一人では支えることができないでしょう。ましてはこの国の英雄となるお方、子孫繁栄が絶対条件と考え、私は第2婦人でも妾の立場でも構わないと覚悟を決めております」
その覚悟に誰もが驚愕し押し黙った。
この沈黙に終止符を打ったのはクロードだった。
クロードは拍手と共に後押しをするように辺り一面に聞こえるように素晴らしいと発した。
その声が広がり賛成する声で溢れ返った。
その声を聞いてベルトラン王も再度口を開く。
「その方の褒賞を認めよう。そしてアスラン・アーバインに問う。
これほどの覚悟をもって告白した娘を貰ってやってはくれないか?もちろん第1婦人でなくても良い、側においてくれるだけで良い」
ここまで舞台が整ってはアスランも嫌とは言えない。
「謹んでエリーナ・リベリアとの婚約をお受けいたします」
その瞬間エリーナはアスランに抱き着いた。
温かい拍手がなり響き、その中の一人にエミリアの姿もあった。涙を流し喜びながら次は私の番ねと覚悟を決めていた。
後に褒賞式の出来事が住民にも伝わるとエリーナの恋が叶ったことを自分のように喜ぶ者がほとんどだった。ただ熱狂的なファンはアスランのことを恨めそうに毒を吐く者もいたとだけ伝えておこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます