126話

アスランがディーネと会話している頃、アークとローランドが首領の息子ヒイロと話している。


ローランドは酒が進んでいるのか大分口調がくだけている。

「カァ~、酒がうめぇ~~~~。こんな上手い酒は初めてだ。」


「確かにな。生きて酒を飲めるだけで最高だ」


ローランドが酒を一気に飲み干し、アークがしみじみと共感している。


「お前ら、気持ちは分かるが部下を労わなくていいのか?」


「俺らがいない方が盛り上がれるさ」


「まあ、それならいいが。それよりも凄い戦いだったな」


「もう、その話をするのか?ちょっとつまみをとってくるから待っててくれ」


そう言うとローランドはつまみを取りにいき戻ってきた。


「それで、どの場面のことを言ってるんだ?」


「俺は作戦本部から魔道具で遠くから見ていただけだから、細かい内容は解らないが一番凄かったのはやはり川が凍った時とドラゴンを倒した時だな」


「かぁ~、遠くから見るだけなんてもったいねぇ。戦に参加したやつは死ぬまで自慢するほどの内容が盛り沢山だと言うのに」


「だからお前達に聞いてんだよ」


「まあ、むしろヒイロ殿は司令官として知っておかないと不味いですからね」


「そ、そうなんだよ。だからお前らの目線で起きたことを教えてくれ」


「しょうがないですね。じゃあ俺から話ますよ。俺的には死ぬ寸前だった時に助けてもらった奇跡が一番忘れられないですね」


「なんだなんだ、その話は俺も知らねぇぞ」


アークは第1防衛陣のことを酒を飲みながら詳しく話だした。


「マジか。そう言えば俺も第4防衛陣の最前線で戦ってる時に幾度となく弓や魔法で助けられていたな。」


「なるほどなるほど。事前に長距離部隊を配置して前線が崩れないようにしていたと」


「ヒイロ殿はアスラン殿から詳しく聞いていないのですか?」


「策や罠は事前に用意したので知っているが詳しい内容は状況で変わるからと言って大雑把なことしか教えてもらえなかったんだよ」


「まあ防衛作戦をあの短期間で作り上げたこと自体がもう奇跡ですがね」


「ちげぇねぇ。前線で状況を見ながら冒険者を配置してた見たいだし、救助部隊をまさか自分の従魔にさせているとは思ってもみなかったな」


「ああ~、あの従魔のおかげで死人はかなり減ったな。しかも、足場を確保し易いようにまでしてくれていたからな。あのおかげで陣形を保てて…、あっ。」


「ローランド殿も気付いたか?」


「やべぇ~な。深く考えなかったが、あの一つ一つの行動全てに意味があって、一つでも欠けていたら前線が崩壊していたのか?」


「私も気付いた時は鳥肌が立ちましたよ。前線部隊、遠距離部隊、救助部隊、防壁魔法部隊、そしてスキルを考慮して配置した冒険者達。全てに意味があって計算され尽くした戦略があったからこそ私達は生きているのだと」


「………。」


ことの凄さに全員の思考が止まり沈黙が流れた。そしてようやくローランドが話だした。


「俺らよりも若いアスラン殿は何者なんだ?」


「昔エミリア様もよく天才だって騒がれていたが、アスラン殿に関しては神の申し子と言ってもいいぐらいだな」


「確かに。今まで話したことは全て知略の内容だ。さらにはあの武力に魔法か…。」


「確かに神の申し子と言っても過言ではないな」


「ちなみに戦略魔法級のあの二つの魔法の内容は知っているか?」


「詳しい内容は聞いていませんが、ただ精霊魔法とだけ」


「やはり精霊の宿主だったか」


「俺も剣では負ける気はしないが、あの魔法は反則だな」


「ドラゴンがでた時に私は絶望を感じましたよ」


「それは俺もだ。もはや人がブラックドラゴンを一人で倒す時が来るとは…。」


「まてよ、単独でブラックドラゴンを倒したと言うことは、称号にドラゴンスレイヤーが…」


三人はその事実に気付いた時、今後のアスランの行く末を考えながら戦話を朝方まで語り合うのであった。


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