122話

ついに辛く険しかった戦いに終止符が討たれた。


スタンピードも終わりの見え始めた残りの魔物を増援部隊が殲滅しながら前線を押し上げ警戒を行っているところだ。


冒険者や騎士団は安堵の気持ちからかその場に座り込み話だした。


「俺達生きているんだよな?」


「ええ、そうね」


「この街を守れたんだよな?」


「ええ、何度心が挫けそうだったかしら。そうよ、私達がこの街を守ったのよ」


「多くの犠牲がでたけど、何とか守りきれたんだよな…良かったぁ~」


「ああ。俺自身を褒めてあげたい気分だよ」


「私が褒めて上げる。みんな本当に頑張ったわ。貴方達が街を救った英雄よ」


「ええ、そうね。私の子供を守ってくれて本当に有り難う」


街を守れたことで互いに互いが褒め合い、英雄と言われ照れくさい気持ちでいると冒険者達や騎士団達は次第に涙腺が崩壊していく。


「グスン。本当に良かった」


「ああ、みんなと一緒に戦えたことを誇りに思う」


「あいつの敵はとれたのかなぁ…、いつか天国でこの話をしてやるんだ」


「ハハハ、もう手も動かないや。確かに凄い戦いだったからな」


「そうね、それにこの戦いは歴史に刻まれる程の内容だわ」


「それにしても凄かったな~。何度挫け諦めそうになったか。その度に何度奇跡を見せられたのか」


「本当に凄い戦いだったな。この指揮官は何処まで想定してたんだろうな?」


「俺達じゃ想像できない程考えられてたんだろうな」


「そうね。だからこそ全員逃げないで戦えたんだろうな」


「本当奇跡見たいな話しだよな」


様々な話をしている時、増援部隊の兵達もちらほらと駆けつけてきた。


「お疲れ様。凄い戦い見たいだったな」


「奇跡に近い戦いだったって聞いたぜ」


「それにあの歌声には痺れたね」


「奇跡と言えば、俺達が戦場に間に合ったことも奇跡に近いんだがな」


「えっ?そうなのか?」


「詳しくは上層部しかわからないが…。」


「ちなみにこの街に来る途中にもスタンピードで流れてきた魔物も多くいて対応させられていたんだが、途中で貴族の私兵団なのに一致団結したのは驚いたな」


「あ~確かに。先陣を貴族自ら突き抜けて疾風の勢いで風穴を開けたのは度肝を抜かされたよ」


「それだけじゃない、あの歌声を聞いた後は疲れていたはずの馬が急に回復したように凄い速さで戦場に向かっていくんだ」


「そ、そうなんだ。この戦場以外でも奇跡は起きていたのね」


「ただ、何と言っても10万以上の魔物の群れと戦って街を守ったお前ら一人一人が英雄だ」


「己を誇れ、お前達が街を守ったんだ」


「いまの状況や亡くなった者を見るだけで、壮絶な戦いだったのが良くわかる。本当に頑張ったな」


増援部隊と一緒にこの戦いを振り返りながら話していると声が聞こえてきた。


アークは伝達の魔道具を持って話し出した。


「まず諸君らに最初に伝えよう。この防衛線は我らの勝利だ、勝ち鬨を上げろ~~~~。」


騎士団は武器を天にかざし冒険者と一緒に雄たけびを上げる。


「うおぉ~~~~~~~~~。」

「守ったぞぉ~~~~~~~。」

「わぉ~~~~~~~~ん~。」


様々な声の雄たけびが木霊する。その中にハクの雄たけびも響き渡った。


「そして冒険者、騎士団、増援部隊の皆の者、このスタンピードに勇敢に挑んでくれて感謝している。誰一人かけてもこの街を助けることが出来なかったと思える程の戦だった。俺はお前達の雄姿を一生心の中に留めていくだろう。多くの犠牲をだしながらも最後まで諦めずにこの街を守ってくれて本当に有り難う。」


騎士団長のお礼の言葉に一人一人がこの戦の勝利を噛みしめ誇らしげな気持ちになりながら話を聞いている。


「疲労困憊な状況だと思うが順次街まで戻ってもらいたい。その護衛を増援部隊に任せる。そして街では宴の準備をしていると聞いている、亡くなった者や家族のためにも参加してこの戦を語らってほしい。この街を救えたのは亡くなった者達のおかげでもあると…。最後にこの戦の賞金や王都のパレードのことなどは随時冒険者ギルドを通して通達していく。それでは感謝の気持ちはまた宴で、開散」


誰もが嬉しさと悲しさを噛みしめながら街に戻っていくのであった。


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