121話
ブラックドラゴンはブレスを反らされたことに激怒している。
魔族からの指示は街に一度ブレスを放ち、その後戦場を蹂躙して帰ってこいと指示を受けたのみ。
しかし、頭に血が上ったドラゴンはそんなことはお構いなしに全魔力を放出して街にブレスを放とうとしている。
その魔力濃度に戦場にいる全員が固唾をのみ終わりを察した。
「どんどんブレスが大きくなっていく」
「あれはブレスと言うより太陽と言っていいほどの大きさじゃ…」
「さっきのブレスも運よくしのげただけなのに、もう終わりだ」
「せっかく街が救われたと思ったのに何なのよ」
「神様はいないの?この状況をどうしろって言うのよ。人の出来る次元を超えてるわ」
「お願いだから誰か。私の命はあげるから、どうかどうか街にいる子供の命だけはお願いだから助けてよ」
「こんな命ならくれてやる、だから頼む…、頼むよ…。」
絶望だった叫びが次第に己の命と引き換えに助けてくれと願うようになっていた。
その間も魔力は膨れ上がり、戦場にいる全員の力を合わせてもどうしようもないことは皆わかっている。
わかっているからこそ、皆己の命を捨ててでも街を救って欲しいと泣き叫んでいる。
そんな異様な光景に心を打たれ動いた者がいた。
その瞬間、街を守る位置に膨大な魔力が膨れ上がった。
その光景を見たアスランだけが叫んだ。
「や、やめるんだ、やめろぉ~~~」
「アスラン、短い間だけだったけど楽しかったわ。有り難う」
「何故お前が命を捨ててまで頑張る必要がある」
「アスラン現実を見て。私もねここのみんなを助けたいの。それにねアスランだけは絶対に死なせない。アスランならこの気持ちわかるよね」
「わかる、わかるけど…」
「もう魔力を放出してるの、一緒に覚悟を決めて」
アスランの瞳には涙が溜まっている。
「わかった、覚悟を決める。その代わり絶対街を救うぞ」
フローズンは微笑んだ後、自らの命を全て使い魔力を増幅していく。
太陽の如く大きくなったブレスと対局に凄い勢いで氷の球体が膨れ上がっていく。
冒険者や騎士団は何がなんだかわからないまま状況を見つめながら口ずさむ。
「あ、あれは何?」
「凄い膨れあがっていく」
「神は我らを見捨てなかったのか」
「お願い、この街を救って」
そして魔物の群れは終わりが見え始めたころ、後方では誰もが片膝をつき祈りを捧げている。
そんな中、フローズンの声が聞こえる者は、誰もが泣きながら最終の結末を見守っていた。
二つの球体が上空でそびえ立つ異様な光景にいつしか辺り一面静寂が訪れた。
そして最大まで膨れ上がった魔力がついに双方に向かって放たれる。
「天変地異をも超える命の息吹よ、命を燃やし極限なる魔力をへて、誘うは森羅万象なり。すべてを終わらせる精霊の息吹」
そしてブラックドラゴンからも叫び声が木霊する。
「グゥオォ~~~~~~~~~~~~~~~~」
この世の物とは思えない程の魔法がぶつかり合う。
突風が巻き起こり、ぶつかった後は一進一退の攻防を繰り広げている。
しかし、ここで氷の球体がすこしずつ溶けていき押され始めた。
押されようがアスランは諦めない。
それもそのはず、フローズンが命を懸けて作ったこの魔法だけは絶対に負けられない。
「まだだ、絶対に負けない。負ける訳にはいかないんだぁ~~~~」
アスランは叫びながらも冷静に思考を巡らせている。そして閃き賭けにでた。
「命の息吹よ全てを吸収し飲み干せぇ~~~~~」
次第に氷の球体がすこしずつ膨れ上がり、徐々に押し返していく。
この好機を見逃さずアスランは次の一手にでる。
「変幻自在の槍へと変化し、巨大な敵を穿てグングニル」
神話の槍へと変化し、ドラゴンのブレスを吸収しながら徐々にスピードを上げながらブラックドラゴンへと向かっていく。
そしてついにブラックドラゴンの胸へと突き刺さり風穴を開けた。
見守っていた全員がついに歓喜の瞬間へと変わった。辺り一面に雄たけびが響き渡り勝利の二文字へと終わりを告げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます