120話
上空から凄いスピードでアスランを庇ったソフィアとエリーナに向かって魔法が向かっている。
誰もが魔法が当たると目を背けた瞬間、二つの影が上空から現れ前に立ちはだかった。
「おい、エリーナ王女。護衛を頼まれているとは言え、こんな最前線に行くのはやめてくれ」
「ええ、今度からそうするわ。頼りになるわねS級冒険者のジョニーさん」
「ふん。ようアスラン…っと挨拶したいところだけど、その前にお前は味方か?」
ジョニーはソフィアの前に立っている男に話しかける。
「私ですか?私は貴女の味方ではないですが、後ろにおられる方の味方ですよ」
「何故魔族が人間の味方をする?」
「強いて言えば恩返しですかね」
そんな話の真っ最中に魔族のボルフライが話かけてきた。
「おい貴様、同族が何故邪魔をする?」
「たかだか同族ってだけでしょう?魔族が私に何をしてくれたのですか?むしろ逆に…、貴方達ならわかるのでは?」
「ちっ、お前は敵ってことでいいんだな?」
「ええ、私は私の信念に従うだけですので」
「最後に一つだけ聞かせろ。飛翔族のお前が何故執事服を着ている?」
「カッコイイから?恩を返すため?何故でしょうね」
「もういい後悔するなよ」
そう口ずさんだ後、ボルフライは笛の様な魔道具を吹きだした。
甲高い音が一面に聞こえる。
ジョニーは味方の魔族の男に話しかけた。
「どっちか一人の相手をしてくれないか?もう片方は俺がやる」
「貴方で倒せるのですか?」
「できなくてもやられはしねぇよ」
「なら後ろのお方のためにひと肌ぬぎましょう」
こうして、魔族達との戦闘が始まろうとした時に遠くからもの凄い勢いで向かってくる影があった。
高らかに笑いながらボルフライは話しかける。
「フハハハハハ。お前らはバカか?死んで後悔しな。お前らの相手はあいつがする。じゃあ、せいぜい頑張れよ。じゃあな」
ボルフライの指差す先には大きな魔物がやってきている。そして魔族の二人は魔物に指示を出すとその場から離れていった。
その魔物が現れた瞬間、辺り一面が悲鳴をあげた。
「まさか、そんなバカな」
「誰か嘘だと言ってくれ」
「きゃぁ~~~~~~~」
「もう無理だ、何でこんなところに」
「せっかく、明るい未来が見えていたのに」
「ド、ドラゴンだと」
「違う、ただのドラゴンじゃない、あれはブラックドラゴンだ」
様々な声が絶望を伝えてくる。
アスラン達でさえも、圧倒的な存在にひるまずにはいられない。
もちろんS級冒険者のジョニーでさえも。
「魔族のお前?ドラゴンを何とか出来るか?」
「貴方はバカですか?普通のドラゴンなら協力してなんとか追い返すこともできたかもしれないですが、ブラックドラゴンとなれば全滅確実ですよ」
「だよな。しょうがない逃げるぞ」
ジョニーはエリーナを連れて逃げようとしたが誰一人として動かない。
皆が見つめる先には魔力が高まっていくブラックドラゴンがブレスを街に向けて放とうとしている。
誰一人見守るしかできない状況で一人だけ行動して者がいた。
「フローズン、全魔力を使って氷の壁を作るぞ。ブレスを反らす形で作る。いいな」
「任せて」
強度を上げるため、即座に詠唱を唱えた。
間一髪ブレスは発射される前に完成した。
「グオォ~~~~~~」
ブラックドラドンの雄たけびと共にブレスが発射され、氷の壁に衝突する。
氷の壁が曲線を作り、ゆるやかにブレスの軌道が変わろうかとした時、氷の壁はもろくも壊れ崩れた。
すこしは向きが変わったが相変わらず街に向かっている。
「ドゴォ~~~~ン」
凄い音と共に街の東側の防壁に当たり防壁は崩れ果てた。
街の中は阿鼻叫喚である。
唯一の救いはスタンピードを考慮して防壁近くから住民は避難していたことだ。
しかし、偵察隊の兵や東門の兵達は崩れた防壁の下敷きとなっている。
誰もが絶望し、逃げ道のない状況にパニックに陥る。
そして戦場では増援の兵達が魔物を殲滅しながらも、逃げるかどうかの判断をしている。
そうたった一つの存在、ブラックドラゴンが現れただけで状況は一変した。
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