118話

今度は何処からか歌が聞こえだしたのだ。


冒険者や騎士団達は歌が聞こえてくるが、今の状況を考えると幻聴かと思っている者がほとんだ。


騎士団や冒険者達は必死に魔物の攻撃に必死に手だけ動かし耐えているとその歌が否が応でも耳に入ってくる。


一度聞こえ始めると透き通った美しい歌声が耳から離れない。


「な、何か歌が聞こえないか?」


「お、俺も女性の声で歌が聞こえる」


「私の気のせいじゃなかったのね」


「とても綺麗な声で、心に沁み渡る歌だな」


「そうね。えっ楽器の音?え、曲が聞こえてきたんだけど」


「あ、本当だ素敵な曲。歌声とまっちして聞き惚れちゃうわ」


目の前の魔物を倒しながら、いろんな声が聞こえてくる。


「ちょ、ちょっとまって」


「そんなに慌ててどうした?」


「体が自然に動くんだけど」


「え?さっきまで手も足も動かすのでやっとだったのに」


「奇跡だわ。何度奇跡を見せてくれるのよ」


「あと、あと少しだ頑張ろう」


「俺達の手でつかみ取れる未来がそこまできてんだよ、邪魔をするなぁ~」


「おらぁ~、いっちょ上がり。次だ次。力が沸いてくる」


ソフィアは歌声にずっと癒しの気持ちと闘志を燃やす意思をもって歌っている。


「力尽きて、倒れ果てた。

もう、苦しくて、立ち上がれない。


一瞬の時が廻り、あなたの顔が思い浮かぶ。


この声が聞こえるか?この歌が聞こえるか?


振り絞り、力込めよ、君の一歩が、明日の未来を変える。


共に歌え、歌え叫べ、力の限り泣き叫べ。


空けない夜はない。目の前の微かな光を掴み取れ。


ラ~ラ~、ラ~ラッラァ~。

ラ~ラ~ラ~、ラ~ラッラ~ラァ。

ラ~ラ~ラ~、ラ~ラ~ラ~。」


ソフィアの歌声がスキルが絶体絶命の窮地を救ったのである。


歌声を聞き、希望の光が注いだ時、ローランドでさえも泣きながら戦っている。


「お前ら、後すこしだ、後すこしだけ頑張ってくれ。これ以上誰も死なないでくれ…頼む」


ひたすら耐えながら戦っているとついに早馬で駆けてきた貴族の私兵団が到着し、次々と魔物を殲滅していく。


私兵団からも激励が飛び交う。

「良く頑張った、もうすぐ第2陣がくる。それまで自分の身だけ守って耐えてくれ」


「俺達は助かるのか?」


「この街は救われるのか?」


「そうだ。だから絶対に死ぬな」



その言葉を聞いた冒険者達も泣きながら耐える。

ここまで来れば後はひたすら耐えるだけである。


ちなみにアスランはと言えば、声が聞こえる前に「後すこし、後すこしのはず」と心の中で自分にいい聞かせ、一番危険な最前線で精鋭騎士団が手や足が動かなくなると同時に前にでてひたすら耐えながら剣を振るっていたのである。


ローランド率いる精鋭部隊と共にひたすら耐えていると聞いたことのある声が聞こえてきた。


「アスラ~ン」


「アスラン、無事かぁ?」


「アスラン、本当に良かった」


エリーナ、クロード、エミリアがそれぞれ兵を連れてやってきたのだ。

もちろんソフィアやカルラなどもいる。


クロードが私兵団に指示をだす。


「第1兵団は散開、第2兵団は陣形防御の型。この辺りの魔物は一匹たりとも後ろにやるな」


そんなクロードの姿を見てアスランは驚いている。


「ここ魔物の最前線だよ。どうしてここに?」


「アスランなら絶対にここにいると思ってね。」


「思ってねって…、ここは一番危険なのに」


「一番危険な場所にいる者を助けるために選りすぐりの兵を連れてきたんだ。間に合って良かったよ」


「有り難う。本当にギリギリだったから助かったよ」


さらにはエリーナやエミリアが魔法を放ちながら、どんだけ心配したかなどお互いが熱弁して話してくる。


最前線にいながらも魔物が私兵団で食い止めている状況で安心したのか、それともやっとこの戦いに終止符が終わったと思いアスランは気をぬいていたのか…、クロード達がいる状況が安心感を与え、すこしだけ話しこんでいた。


しかし、そんな時に限って大変なことが起こる。


なんと、上空から二つの魔法がアスランとエリーナに向けて放たれていたのだ。


一瞬の隙が生死にかかわる事態と変化した。


このことに一番に気付いたのはソフィアとカルラだった。


ソフィアは瞬時にアスランをかばって魔法を受けようとした結果、魔法の直線状に身を置くこととなった。


カルラは一歩下がっていたため、瞬時に助けることが出来なかった。


また、私兵団でさえ瞬時にエリーナを助けることが出来ないことで魔法がソフィアとエリーナに直撃しようとしていた。


こんな時に肝心なアスランはソフィアに突き飛ばされていたためにどうすることも出来ない。





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