117話

冒険者や騎士団はすこしの休息や会話のおかげで何とか生気を養っている。


そして、ここでも小さな奇跡がおこっていた。


沢山の者がなくなりギリギリの戦いと聞いても冒険者達は誰一人逃げる者がいなかったのだ。


この街を守りたい者、愛する者のために必死に戦う者、名声を求める者、この先の行方を見守りたい者、人それぞれ戦う理由は違うが最後まで戦うと決めているのだ。


そして遠目にも魔物の群れが見え、戦闘配置に皆がついた。


魔法部隊はもはや魔力がカツカツだ。要所要所で使えるよう準備だけはしている。


第4防衛陣にて二度目の衝突が始まった。


すこしの回復だったが、精鋭騎士団や高ランク冒険者といった者は余裕で対処していた。


そして幾度となく魔物を押し返し殲滅していく。


まだまだ終わりの見えない戦いに愚痴りながらも戦っている冒険者。


街のために命を捧げて戦う騎士団。


その戦いも時間が進むにすれて終わりが近づいてくる。


魔物との総力戦が始まってついに9時間が経とうとしている頃、ついに均衡が崩れ始めた。


そう、人の気力・体力も限界がある。足の踏ん張りが効かなくなり、倒れる者が増え始めたのだ。そして最悪の形で前線が崩れ始めたのだ。


こうなってきてはどうすることも出来ない。


立ち上がり懸命に剣や槍を振るうが手に力が入らない。一撃で仕留めていた魔物に手こずり、さらにはその間に他の魔物が横を通り過ぎている。


傷を負った者や後ろで回復するはずだった者も総出で何とか戦っている。


そして夕方に迫ろうとした頃、時間にして総力戦から10時間後には、一人、また一人と亡くなる者が増えている。


全体の人数も減っていき、目の前にはまだ終わりの見えない光景に冒険者達の目には諦めの感情が見えている。


騎士団でさえも諦めかけながら戦っている。


祐逸精鋭騎士団だけはアスランの言葉が聞いているのか、まだ諦めてはいない。


しかし、そんな心をもあざ笑うかのように魔物の群れは勢いを増して襲ってくる。


精鋭騎士団の頑張りで何とか踏ん張っていたが、ついにその精鋭騎士団でさえも絶望し足が止まろうとしていた。


アスランの言葉があろうが、目の前の光景は変わらない。


誰もが諦め、手や足を止め、いや動かそうにも動かせない状況に陥り最後の時がくるのを待とうとしていた。


そして全てが終わろうとした時に何処からか声が聞こえてきた。


「勇敢なる勇者共、生きているだろうか?俺の名はクロード・エイティス。今各貴族お抱えの部隊が近くまで来ている。だから諦めるな。愛する人やこの街が魔物に蹂躙されてもいいのか?後一歩、その一歩の踏ん張りが街や子供達の未来を救うんだ。だから頼む、俺らが到着するまででいい、最後まで諦めないでくれ。俺らに勇敢に戦っているお前達を救わせてくれぇ~~」


クロードは伝達の魔道具にスキル伝達を使いながらひたすら話しかける。


諦めかけていた全員の心に小さな、とても小さな火が灯だした。


「まだだ、あとすこしだ」


「ええ、絶望の中やっと小さな火を見つけたのよ」


「だから、私の手よ足よお願いだから動いて」


だれもが心から叫び必死の想いで体を動かしている。


しかし、体は正直で魔物の攻撃に耐えるのがやっとだ。己の命を守のがやっとな状況に戻っただけだ。


「お願いだから、動いて~~~」


そんな多くの叫びが奇跡を呼び寄せた。






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