114話
ついに第4防壁まで魔物の群れが襲寄せようとしている。
誰もが固唾を呑み、目の前の光景を見つめる。
そんな中魔物の群れに飛び出した影が二つ。
一つ目は言わずもながなローランドである。
そしてもう一つの影は何とダウティーだった。
冒険者や騎士団は魔物の群れに飛び込んでいく姿に美しささえ覚え、目に焼き付けている。しかし、見続けているわけにもいかず、気付くと精鋭騎士団とダウティー率いるAランクパーティが続いて飛び込んで行く。そうなってからは、雄たけびを上げながら行動者、隊列を組んででる騎士団など多種多様である。
ただ、陣形や隊列を組み指定の場所で迎え撃つのは騎士団と精鋭騎士団のみである。冒険者は戦闘スタイルが違うため、好きな場所にて迎え打つことになっている。
そして全面衝突の瞬間がやってきた。ついに先頭の部隊の戦闘が始まった。
冒険者や騎士団の前衛はおのずとスキルを使い相手の突進のスピードを削いでいく。
無駄な死をさけるため、そして指揮を上げるために最前線の一番危険な場所にエース級を配置したのである。もちろん、簡単にエース級が亡くなれば指揮が下がり前線が維持できないので諸刃の剣である。
もちろんアスランも何も考えない訳ではない。
この日のためにギルド長を使って冒険者達に頼み込んでスキルを教えてもらえないか必死に頼み込んだのだ。もちろん嫌がる冒険者もいたが作戦指揮官とギルド長以外に情報を伝えた場合罰金が支払われることを契約魔法にて行使されることで了承してもらった。
必中や遠距離攻撃を持つスキルの冒険者は最前線の部隊がピンチになった時にスキルを使う手筈になっている。
こうした幾つもの準備が今の現状の数々の奇跡をおこしていた。
しかし、総力戦の戦いはどんなに策で翻弄しようが、数の暴挙には…。
第4防衛陣では、幾多の戦闘が繰り広げられている。
「おらぁ~」
「ぐはぁ~。」
「大丈夫か?」
「俺にかまうな、一匹でも多く魔物を倒してくれ」
「そんなわけに行くわけないだろう…。」
「俺が死んだ時は嫁を宜しく頼む…。泣くな戦え」
そんな窮地にはいろんな場所で見かける影があった。
沢山の負傷者がでるなか、ハクにのったディーネが負傷者をハクに乗せ前線から離脱させていく姿だ。
しかし、助けているはずのディーネの目からは大量の涙がこぼれ落ちていた。
何故ならアスランから負傷者の救出の役目を負ったディーネだが、その内容は当然ながら…助かる命のみ救出しろであった。大きくなったハクといえど乗せれる数は数人である。命の選別をディーネがしないといけないのだ。
助からないと判断した重傷者の横を通るたび「ごめんなさい」と心の中で呟きながら横を過ぎ去る。次第に涙が出て、気付けば大量の涙があふれ出て当然である。
そんな光景を見た冒険者や騎士団達は己の仲間の死を受けとめ、あいつの為にと奮起する姿が見受けられた。
そうした中気付けば防衛が始まって3時間後が経っていた。皆隠せないほどの疲労に襲われている。
そんな中ローランドでさえも疲れているが、絶対に弱音は吐かない。何故なら…。
「まだまだ~、次っ‼ローテーションで部隊を回せ。最悪の場合は防御部隊に時間を稼がせてすこしでも休ませろ」
「隊長、隊長も休んで下さい」
「回復薬を呑んでるから大丈夫だ」
「回復薬は疲労には利きません。それに飲めば飲むほど傷に対しても回復も遅くなっていきます」
「そんなのは知っている。気合だ気合。それに死んだやつの分まで頑張らせてくれ…、頼む。こんな俺について来てくれた部下のために、どうか、戦わせてくれ」
「分かりました。では副長として私も御供します。配置だけ指示してきますので、しばしお待ちを…。」
こうして精鋭部隊でさえも多数の者が命を落としていた。
冒険者側では、巨大な楯を構えてひたすら耐えている者がいた。
スキル鉄壁をもった大柄のA級冒険者テッシンだ。
「俺の後ろからどんどん殲滅していけ~。探索部隊は魔物のスキル発動前に傷を負わせてスキル発動を阻止することに専念しろ。はぁ~、はぁ。」
「やっぱ、A級冒険者は凄いわね。私達より疲れているはずなのに」
「負けてられない。俺もまだまだ戦うぜ」
「この街は俺が守る。みんな頑張るぞ」
「ええ、絶対守るわ。愛する子供のために」
どれだけがんばってもまだまだ終わりの見えない戦いに自らを鼓舞させ頑張る冒険者達。
こうして終わりの見えない防衛線が続いていた。
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