閑話 クロードの葛藤(学園時代)
どの時代にも奇跡の世代と言われる学年が存在する。
日本ではなく異世界でもその現象は同じであった。
アスランが入学した学年も………。
幼い頃から神童と呼ばれていたクロード・エイティス。伯爵家の次男に生まれ多彩なる才能に恵まれたが、次男という自分の立ち位置を理解した瞬間に子供ながらに兄を称え、自由に生きる道を選び平凡な日々をやり過ごしていた。
そんなクロードに震撼させた人物が現れた。自分と同じ立ち位置なのに、自由に楽しくありのままに生きているアスランを見て、クロードは自分の生き方がちっぽけに思えた。そして、アスランと共に過ごし、沢山の刺激を受けて過ごす今の学園が凄く楽しかった。
そんなクロードがアスランに訪ねた。
「なあ、アスラン?神童って呼ばれる子供がいたとしたらどう思う?」
「えっ、神童?いきなりだねぇ~、何かあった?」
「いや、アスランならどう思うかな~って思って?」
「そうだねぇ~、名は由来を表すと僕は思っているよ。しかし、過ぎたる名は身を亡ぼすとも考えるかな」
「深いな。もし神童と呼ばれてる子にかける言葉があるなら何て言葉を掛けるかい?」
「仮にクロードが神童と呼ばれている子供だとした場合、僕は君にこう伝えるかな」
アスランは一呼吸溜め、真剣にクロードの目を見て伝えた。
「クロードと言う名はそれ以上でもそれ以下でもない。その名を刻めるのはクロードの生き方と頑張り次第…だとね」
「はっはっは。流石はアスラン…本当に有り難う。」
アスランの言葉を聞いたクロードはモヤモヤした気持ちが澄み渡り、空をずっと眺め一粒の涙を流すのであった。
そして、このことが切っ掛けでクロードはアスランにスキルのことを話すことにした。
「アスラン聞いてくれるか?」
「真剣…そうだね。もちろんいいよ」
「俺の固有スキルについてなんだ…。」
「クロードは固有スキルを隠しておくタイプだとばかり…」
「貴族として隠しておくってのは当然なんだが…、実は恥ずかしくて」
「何のスキルだろうが使い方や視点を変えると以外と有能だったりするから、気にせず教えてよ」
「そ、そうだといいな。僕の固有スキルは伝達ってスキルなんだが、それを知った両親もガッカリしてね。自分で調べて見ても、伝達の魔道具もあるし、何かを伝えることしか出来ないスキルだなと」
アスランは何も言わず真剣に聞いている。
「それでも諦めきれないから…。アスランなら何か思いつかないかと思って」
アスランは事前に鑑定スキルでスキル名を知っている。そして日本の知識によってある可能性を考えていた。
アスランはしばし考えてるふりをしてから伝える。
「う~ん、伝達か~。でも一つだけ思いつくことがあるかな」
クロードは目を輝かせて聞いてくる。
「え、もう何か思いついたの?なになに?」
「伝達は言葉などを伝えるって他に、体の神経などにも伝達するって意味があると思うんだ」
「神経に伝達?かりにそうだとしても何もないような…」
アスランはニヤリに微笑みながら述べる。
「魔法について僕の考えは授業で話したと思うけど」
「魔力、変換、方向、…、あっ。」
「気付いたようだね。魔法に関しては伝達させることが多い故に凄い可能性を秘めていると思うんだよ。例えば剣に魔法を伝達させて斬撃を放つこともクロードなら他の人よりもスムーズになったり、覚えやすかったりもするんじゃないかな。まあ一番は魔法効率が断然良くなるだろうから、魔法に関して他の人よりも凄い可能性があると思うけどね」
クロードはアスランの言葉を聞いて驚愕している。気付いた内容が雲泥の差なのだ。
さらにアスランは言葉を続ける。
「これは憶測だけど、もしかしたら伝達には他の可能性があるような気がするんだ。伝達の魔道具と人間のスキルには大きな違いがある気がするんだ」
「違い?」
「簡単に言えば感情の違いかな。魔道具は声や音を伝えるだけ。しかし、人間には感情がある。ってことはもしかしたら、感情や伝え方によっては相乗効果があるんじゃないかと思ってね。」
ここまでくるとクロードは何も言えない。
驚き過ぎて逆に冷静になり心の中で「これが本当の神童なのだろうな。他人から神童と呼ばれすこしは自惚れていた自分を恥じるばかりだな」と自分を納得させていた。クロードはいままでのわだかまりが全て消し飛んだ気分だった。
そして、スキルに関してもいろいろ実験した結果、感情や伝え方によっては相手を鼓舞する様な効果があった。
さらには、この件以来クロードは人より努力を惜しまず前向きに頑張る姿が多々見られるのである。
アスランはクロードのもう一つの固有スキル振動のことを話してくれることを楽しみに待つのである。
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