そのサン

 夜8時。


 今日も今日とてお風呂場に。


 ではなく。






 僕は今外にいる。


 詳しく言うなら家の裏。


 入浴中の姉がいるお風呂のすぐ側だ。






 ここまで言えばもうお分かりでしょう。


 その通り。


 僕は今日この小窓にワンチャンスをかける。






 名付けて。


 正面が無理なら裏口入学大作戦だ。






 この小窓をつけてくれた親にマジ感謝。


 僕の背的にもちょうどいい高さにあるし。


 シャワー中の姉を横からチラリだ!











 ……あれ。


 窓が曇ってて何も見えない。


 ひょっとしてこれ曇りガラス?





 シャワーの音は聞こえる。


 でも姉の裸は全くもって見えない。





 目をガン開きにしても。


 おでこを付けてゼロ距離から見ても。


 見える景色はただのモヤモヤ。









 これ擦れば見えるようになるかな?









 確証はない。


 でも可能性はある。


 僕は欲望のままに窓を手のひらで擦った。







 


 コシコシコシコシ。





 擦って擦って擦って。


 擦りまくって。


 この歪んだ面を平らにしてやる。


 その勢いの元、僕は全力を出し切った。










 おっ。


 何だか少しずつ見えて来たような。


 モヤモヤした輪郭。


 人っぽい何かが確かに見えるぞ——!












 ガラガラッッ。




「マジで死ねよ」




 窓が開いたかと思ったら。


 服を着た姉にバケツで水をぶっかけられた。






 この肌寒い中。


 おかげで服はびちょびちょ。


 それも罵倒と共にぶっかけられるなんて。







 はぁぁぁぁ……。


 やっぱりうちの姉はすこぶるたまらないっ!

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