第4話 女神と天使のご対面


 愛浬と話していると、程なくしてお家に到着。

 佐々木さんは外で車と共に待っているようで、僕と愛浬だけで家に入る。



「ただいまー!」


「お邪魔します」



 既に鍵が開いていた扉を開き、玄関の中へ。

 今世初めての友達が家に遊びに来たという事もあり、ちょっとドキドキしてる。それに大好きなという事もあり、自分の大好きな家族を紹介するのは何ともむず痒い感じ。

 直ぐに、奥の方からお母さんがやってきて、僕達を出迎えてくれる。



「お帰りなさい凪沙。そして、いらっしゃい愛浬ちゃん」


「おばさま、お世話になります」



 笑顔のお母さんに連れられて、妹の霙が待つお部屋へ。

 そして女神あいり天使みぞれのご対面。



「うわーーー赤ちゃんだ!  かわいい」



 お前の方がかわいいわ! 略しておまかわ!

 ベビーベッドの上で寝ている霙を見て、夏の花のような笑顔でデレデレと即座に虜になった愛浬。流石我が妹、その愛くるしい天使の寝顔は誰もが魅了されるのだ!



「なぎさも、赤ちゃんの時はこんな感じだったのかな」



 私と同じ水色だけれど、少し薄めで儚い感じで顔立ちも良く、大きくなったら周りがほっとかない美少女になろうこと間違いなしの霙。



「みぞれの方が可愛い!」



 身内贔屓みうちびいきを差し引いても可愛い!

 一番かわいいのは愛浬だけどね!



「なぎさも可愛いよ?」


「ではない!」


「ん?」



 っは、つい否定の言葉が。

 未だに自分が女の子であるという事が、受け止めきれていないというか、認めたくないというか。

 愛浬の親友ポジションは嬉しいが、自分が美少女になるというのは、何ともコレジャナイ感があって受け入れがたく否定の言葉がでてしまう。


 今だって、幼稚園用の制服はスカートだが、私服はズボンの方が多い。お母さんに押し切られて何枚かスカートを持っているが、自分からは着ることはない。



「あっはっはっはっ。ナンデモナイヨ、ナンデモナイヨ」



 とりあえず、笑ってごまかしておけ。これで大丈夫なはず。

 しかし、そうは問屋がおろさなかった。



「聞いて愛浬ちゃん。ウチの凪沙はスカートを履きたがらないし、可愛い格好をあまりしてくれないのよ」


「そうなんですか!? なぎさは折角かわいいんだから、勿体無いよ!」


「ふぇぇぇええ!!!」



 くそぅ、まさかの藪蛇だった!

 霙助けて!



「ねーね、かあいー」



 あああああ、ウチの天使みぞれまでもがそんな悪魔の単語を口に!?

  って、いつ起きたの!



「みぞれ、いつのまにそんな単語を覚えたんだ……!」


「なんでって、霙の隣でいつもかわいいかわいいって言っているからでしょ」


「なん……ですと……」



お母さんによって、凶悪な犯人が分かった。

まさか犯人が僕自身だったとは……!



「それよりも、霙もこう言っているんだから。可愛い格好に着替えましょうね」


「え、なんで! なんでそうなるの!?」



 前々から僕を可愛く着飾ろうと虎視眈々こしたんたんと狙っていたお母さんは、これ幸いにと僕を着替えさせようと迫って来る。



「わたしも、なぎさの可愛い姿が見たいなぁ?」


「ねーね、かあいーよ♪」



 っく、愛浬を見てもを見ても味方がいない……だと。

 最早これまでか…………。


 そしてその後、何故か僕を可愛く着せ替える事になり、無残にも可愛らしいワンピースを来た幼女の姿が出来上がったのだった。


 ちくせう……!


 その後、なぜか僕の撮影会に。



「あぁ~~~凪沙かわいいわ♪ ほらこっち向いて」


 パシャッ


「ぐぬぬぬ」


「ほら笑って笑って」


「いっ、イエーイ」



 まさか、こんな日になろうとは!

 カメラを構えたお母さんと、その横には同じくカメラを構えた佐々木さんの姿。

 っていうか、なんで一人多いの!!!



「なんでささきさんまでカメラ持っているんですかっ!」


「もちろん、お嬢様の成長を記録するためでございます」


「だったら、ぼくじゃなくてあいりを撮るべきですよね!?」


「わたしが撮ってほしいの」


「という事でございます」


「ナンテコッタイ」


「なぎさ、あとで一緒に写真とりましょうね?」


「ア、ハイ」



 お母さんラスボスだけでなく、愛浬からの̻̻佐々木さん刺客が寄こされるなんて。

 こうして、僕の恥ずかしい歴史の1ページが出来上がるのであった。



「ねぇあいり……その写真どうするの?」


「もちろん部屋に飾るの!」


「えぇぇぇ?! それは恥ずかしいんだけど……」


「はじめてお友達のお家に行った記念に…………ダメだった?」



 愛浬さん、上目使いで見つめてくるのは反則じゃない?

 恥ずかしいけど、そこまで言われたら嫌とは言えないよね。



「その、あんまり人に見せないでね?」


「なぎさかわいいー! もちろんよ」



 照れながら言う僕に抱き着く愛浬。

 初めて抱き着かれた感触は、柔らかくて暖かくて最高だった。やっぱりモニターとは違うね。


 でも、一言いいたい。



「あいりが世界で一番かわいいよ!」


「ッ!!!」



 そう言われた愛浬は、驚き、顔が赤くなった。

 心なしか、抱きしめられている体も暖かくなった気がする。



「もう、急になにいってるの……」


「だって、あいりはボクの嫁だからね♪」


「なぎさったら」



 恥ずかしそうに身をよじる愛浬。控えめに言って最高。



「あらあら、2人の世界にはいっちゃったわね」


「良きご友人を見つけられて、じーやは感無量でございます」



 など保護者たちからの言葉が聞こえてくる。

 冷静になって今の自分たちを見てみたら、顔が熱くなった。



「えっと……はなれようか」


「そ、そうね……」


「あら、もう離れちゃうの? もっと抱き合いながら色んなポーズとってくれてもいいのよ」


「お母さん、なに撮ってるの」



 隣を見れば佐々木さんもカメラを構えているし。



「じーや、あとでその写真もちょうだい」


「かしこまりましたお嬢様」



 うん、なにも言うまい。

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