SFの日常
ふわり、と欠伸をした先に、一面窓ガラスからの世界が今日もあたたかな春の日差しを運び、緑の都市として開けている。空を飛ぶ車。スケートボードは今でも人気。
消音設定だから、朝っぱらから大声で歌ったってかまわない(そんな気力はございません)。
・・・そういえば、昨日は「星新一」の本を読んだんだった。まぁこの家に飼っているのは金魚だけだし、突然の災害かなにかによってペットが世界の主導権を握ることなんて・・・
在りうる。
なんてとめどない空想を巡らせているうちにもう着替えも終え、いつも通りの食卓へと向かっている。無意識はこわい。鏡を通り過ぎればボサボサの髪のまま、いつものパーカーとズボンをはいてにやついてるいや怖いな、俺。
歯磨き。
冷却ボックスを開ける。卵を食べないと腹が持たない。サプリなんて味気なくて飲んでられない。そりゃ、遅刻しそうになるときは別だけど。ただ、これでもサプリとかいうやつは案外健気というか、革新的なもので、最近は本格派にまで昇進してきている。栄養はもちろん、ホテル級の味覚、というのが売りらしい、はいはい。
しかしこれで解決するなら最近になって流行りつつある「貴族症候群」はとうに報われているはずである(タブレットパネルを広げる)。「時短」と「効率」にこだわるあまり、より人間らしい、というのが欠落していく世間において突然沸き起こった騒動がある。
食事で吐くのだ。食べた瞬間にアレルギーのように嘔吐する。というか、そういう欲求が止まらないのだとか。まるで過去に逆流したかと思われた。昔、貴族の恵まれすぎたがゆえに起こった食事に対する拒絶反応のように。手軽すぎるサプリやロボットが流行りだしたのが原因とも言われている。
パンと卵を割って、オーブンで焼いてる間に勝手にニュースを流しだしたパネルをbgmに、今日の課題などを見直していく。
あらかた頭の中で組み立てた予定から逆算して、今日の夕飯は4時ごろになりそうだ。
「見てください!この可愛いパンダ!(ニュース)」
それにしても、大概ヒマなやつなんていないだろうに。細胞が鈍くなった途端にこの存在がたちどころに変質してしまう様はリョナグロおっと、これ以上はRを。
金魚に餌をやるのを忘れていた。
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