どこまでが闇で、どこからが光なのか。曖昧たる境界線に正解などない。ただ、見上げた空の純度よりも遥かに多く、多彩な密度がひしめいているこの地上には、闇も光も手に取るように転がっているだろう。

決して美しいものばかりではない。混沌として腐臭を放つころ、美しいものは彼方に投影される。


ーーーーーー

信者はすがりつくしかなかった唯一つの群像を求めて、それ以外を闇とした。闇を悪と注釈するようになる。

正義が悪を必要とするなら、悪もまた正義を必要とするだろう。本来一体だったものが分離によって互いの密度を大きくさせ果ては衝突にまで至るその瞬間は、ただあるがままに流れる自然である。だから残酷だ。


ままならないほど大量の質量をもった闇は、やがて獄となる。

ーーーーーーーーーー


「俺、天使って恋人がいるんだよねぇ。」


ひとりごちたその声が、天に届くはずもない。プライドばかり誇張したこの世界には、純粋な想いなど「ネタ」に過ぎないのだ。


「同情するなら金をくれよ、あのころみたいに。」


救いようのない叫びは嘲笑に変換され、周りがどっと騒ぐ。


「「天に報いを!」」


ああ、馬鹿らしい。みんな孤独で姦しい。目ばかりがらんらんとして、頬が紅潮しどれもこれも粘土細工みたいに表情が固まってろくに笑えやしない。


仲間だなんて嘘だ。

自分が一番同情している、だなんて思うな。

比較できるほどの苦しみがどこにある。


そんなものはどこにもないさ。


ただ正義を振りかざしたいだけの連中が住み着くにはいい場所だ。「敵(他者)なしでは生きていけない」ほど脆い。

なあ、そんなに「俺」は怖かったか?とは言わない。

私情にまみれて一生、嗤っていろ。

俺はそのために地上に降りてきた。

闇を磔にして。




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