死神の世話なんてできませんっ!

ゴシャッ


鈍い音が、暗闇の路地に響く。


”アハハハハッ!「バ●ス!」とっととその酷ぇカオごと地中に埋めて逝っちまいな!”


若い男の狂った嘲笑が真夜中の静寂を打ち破る。足元には「女」。白いワンピースは血だらけ、うつぶせているので分からないが、おそらく額からも、そして肩口からは骨とおもわしき白いものが。

ここは廃街。とある狂信者らによってだれもいなくなった、はずの場所。


”お前、これが好物・・・だもんなあ?え? オ●ガズム麻痺狂サディスト男爵・・・ッ! ったく ”


グリン、と女が顔を向け、そう言い放つと同時に眼球がその姿をとらえる。長身の黒コートからのぞく、青白い顔と鋭い目つきが、一瞬、凍ったようにみえた。

”オマエ、なぜ死なない”

かさついた唇から漏れる声に先ほどまでの余裕はない。


”「死」か。『懐かしい』響きだな ”


血だらけで、破れかぶれのワンピース一枚、白い体がところどころ透けている様を除けば、さっきまではどう見ても「普通の」、「一般人の女性」が、

その長い黒髪をゆらして立ち上がり


ボギ


さきほどまで機能不全だった右肩の骨を左で矯正した。


「エネルギーチャージ完了」


たじろいだのが隙


次の瞬間、男の巨体はガン!という衝撃とともに壁に押さえつけられ、一息もなく首をへし折られていた。

巻きあがる土埃に崩れ落ちる。途端、彼女の瞳からあらわになる恍惚。


「いただきます♪」


静寂が戻る。夜が更けていく。








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