ダンジョンやるくらいなら怪談話(洒落怖)でもしようぜ。

「おいおい、ほんとに行くのかよw」

われながらオーソドックスなセリフだと思うが、それでも震える腕を精一杯抑えながら言ったのだ。

「罰ゲームなんだから仕方ないだろ。」

そう返した友人yは、片手でスマホを操作しながらRECを回す。

「はーい、ここがボスのいるダンジョンでーす。」

ロボットみたいな口調で俺たちと、背後、闇と森に閉ざされた不気味な建物を映し出す。

緊張してる?  いや、そうじゃない。

飄々として焦った様子がどこにも見えない。

長年(5年)の付き合いからも分かることだが、こいつはいつも冷静沈着。おまけに黒髪の切りそろえた下にある凛とした瞳、人形みたいな顔。美形。

・・・絶対女子にモテるだろ、美形だし。キャーこわーい!!とかいいながらこいつの腕をとってマウント争いが勃発するのか!?くそっ!うらやましい。

「? どうした? 俺に”幽霊”でもついてるのか?」

「そそそそそんなわけないだろッ?!いい加減に、、、 帰ろうぜ。」


・・・


「ふーん、怖いんだ。」

うわ、この視線。浴びたくない。劣等感がうめいている。とても、痛い。そんな、機械的な冷たい目で、みないでくれ。

たえきれずに背後を見る。

まるで廃病院です、といわんばかりの風貌だ。

ここが入り口、みたいな場所は草に覆われてるし、しかもこれ、絶対鍵がないか、錆びれてて壊せるタイプのやつ。

なんか割れた窓から妙な風が漂ってくるし・・・でも、

だいたいにおいてですねぇ、「怪談」じゃないんですよ?!みなさん!!


入って出てはい、終わり、じゃないんです!ここが重要です!


それも未知の未探索のどこの属性ともしれないボスと!闘って帰るまでがミッションdeath.


もうやだ死にたい。。。



はっ・・・


周りを捜索していたらしいyがガサゴソとこちらに向かってきた音で、突然現実がおとずれた。


「さあ行こう。」

いつの間にか腕を捕らえられている。きゃあ。

。。。




扉の前まで来た。



ゴオォ――――――――――――――――ン


と、空気がさらに重くなったような気がする。

いや、明らかに重い。


「すずしくなったなー」

yがカチャカチャ、どころかバキっともいえるような音で鍵を破壊した。


カチッと携帯用のライトをつけ、コンクリートに置いていく。

一つの廊下を照らすには一個で十分しかも長時間点灯可能。これで背景もバッチリ明瞭。魔力を保存しておくのにそういった準備は必要だ。正直いらないよ。


それよりも汗が背筋をつたうのは別の理由がある。



彼も気がついている、のだろうが、相変わらず黙々としゃべりもせずに階段を下りていく。

ところどころ破れた厚手のカーテンから月光がちらりと見える。

生ぬるい空気がふれるたびに、ここが本当にダンジョンなのか疑いたくなる。

個別に分かれた部屋に無造作に置かれた机、あるいは何もない空間。

まあ当たり前っちゃ当たり前かもしれないが役に立ちそうなアイテムがなく、冒険者に優しくない。

でも、進んでいくごとに、

血糊のついた壁に、ところどころ一面底抜けになっている床。それにさっきから天井でズ、ザザ――というノイズが走っていてうるさい。これは異界からの干渉による電波の衝突だろうけど。

何かが起きていることは確か。



ずっと階段を降り続けている。

「おい、見た目より長い階段だよな。」

気晴らしに話しかけてみる。

「地下へ向かってるからな。」


うん、やっぱりそうだと思ってました。

どうやら本当のダンジョンはここ(地下)かららしい。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る