凱旋の生者(がいせんのしょうじゃ)
爽やかな音楽がきこえてくる・・・天へ誘っているのか?糞野郎、私はまだ死ねない。
ぎこちない手で地面を握ると、白熱した風とともに泥臭い匂いが地面から湧きだった。
空が蒼い。
二国間の争いが十六年、ようやく幕を閉じたのだ。
焼けた草原に横たわったまま姿勢を変える。ガチャと錆びた音がして、鎖帷子(くさりかたびら)がよじれる。思わずくすりと笑いが零れた。こんな重いガラクタを戦友だと思ってしまっただなんて。街がくすんでいる。どれもこれも灰被って、崩れたまま時が止まっている。
民衆が泣いている。喜んでいるのはラッパだけだ。
私情だと思う。
これは所詮ゲームにすぎなかった。
何のために闘うのか。それは私情のため。
間違ってもシステムが原因だなんて、人は納得できない。少なくとも私はそうだった。
憎しみあえば憎しみあうほど、彼らが敵になった。
いつのまにかこの世界は、人間と魔物(ファンタジー)になってしまった。
誰も彼も自分を人間だと思っていた。敵以外は。
戦えば戦うほど、正義も悪も増加していく。
そんな状態で平和など、訪れるはずもなかろう。
どうせなら全ての人間の声が、音楽になって消えてしまえばよかった。
なんとか体勢をととのえると、ブーツを脱ぎ、杖替わりになった剣をつき刺して歩いていく。どちらが勝利したか、なんて明白だ。
さようなら、故郷。
街の反対へと向かう――――――――
世界が現実になっていく。
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