転生先がクソゲーだなんて、やってられっかよ!
「おいエミリ!そっちに回復薬はあるのか?!」
「あっ、、、ごめんちゃ~💦さっき大量に使っちゃって、あと一瓶・・・!」
「馬鹿!相談もせず勝手に飲むなよ!」
「すんませ~ん・・ てッ!アンタだってあたしの弓散々使っといて何様ッ?!」
「仕方ねェだろ!?俺の近くにいたお前の近くの守護者の後ろにガーゴイルみたいなスライムがいたんだからよ・・・!ッってほらほら言ってる場合じゃないぜ! そっちにまだ2匹っ!!」
「ややこしいわ! うわっ 、危ないじゃない!このどんぐり頭ゴブリンもどき野郎!!!」
「守護者様!ここは危険ですからそこの川辺にっ! おい新入り!!お前も一緒に隠れて見とけ! ぬかるなよ!?ここは今バグってAqランクになっちまったんだからな!!」
「ハーイ。」
「も~ここの魔物、・・・!クレヨンで殴り書きしたお化けみたいなカオしてるくせに、くっそ強いんだから!!ふざけやがって!っゼエッ 、マジでありえないんだからっ!!!」
ザ シュッ !
「・・・グわあアアアああアアアああああああア―――――ッ!!!!!」
「「「 !? ロバートォォォオオ――――――――――――――――ッ!!!」」」
――――――――――――――――
よう、俺は新入り。
今しがたこのパーティに入ったばっかりの、「新入り」だ。突然だが俺は今、ランクでも上位のAqランクにいる。バグで。
どうしてこんなことになっているのか。
この世界がムリゲーだからである。
ここで世界について一つ付け加えておきたい。
ここは転生者が冒険者となり、魔物を討伐し果ては魔王を倒すというオーソドックスのど真ん中の王道をゆく世界だ。
冒険者ははじめEランクから始まり、魔物を倒すごとに経験値があがる。
最大はZランクまで.
辿り着くまでに最低5年はかかるとされている。ちなみにそこまできてもなかなか倒せないのが魔王という存在。やってくれるねぇ。
職種は多様だが、そのなかでも特殊なのが3つある。
「守護者」・・・「切り札」。鍛錬を積まなくても魔物を倒せる力をもつ。いわゆるチート。しかし弱点があるようだ。
「賢者」・・・知識と練達、魔法(特に治癒)に発達しており、実質の指導者。
「Q」・・・世界と世界の境界線が薄くなった時に現れる。特殊な技を身に着けていることが多い。かつて流行も盛んだったようだ。
さて、では本題に戻ろう。
ここは本来、牧畜がさかんな村人ものんびりの平和な村だった。らしい。というのは、クエストが入った時点ですでに魔物が制圧してしまっており、今は焼け野原とガレキの残骸以外見る影もないからだ。
その魔物討伐依頼に俺たちのチームに白旗が上がった。
なにより俺が、この世界に転生して間もない冒険者でクエストの魔物levelと比べても比較的容易であるとみなされたからだそうだ。
しかしこの世界の仕組みを誰よりも知っているのは冒険者である。
思考に思考を重ねたうえで、もっともレベルの高いZランクが2人、次いでAランクが2人入ってくれることとなった。それと、いざという時の切り札「守護者」が一人。
しかし、問題は早速おき始める。
現実(バグ)だ。
思わず唇をかみしめる。
―そうだ、もとはといえば世界が悪い。あらためて己の境遇を恨む。
魔物のレベルが勝手に上がったり、帰ってきたらパーティのメンバーが突然別人に入れ替わってたり。頼んだ食事にモザイクがかかってたり、宿屋で寝たら次の日一面の野原になってたり。
王都だが、王が翌日王女になっていたり、民衆がある日街から忽然と消えていたりする。
正直言う。これ、絶対ウイルスだぞ。
だがそんなゲームにも一つの共通項があるはずだ。一つ、救われているのは、冒険者の「記憶」が一致していること。
だから協力せねばならない。この理不尽なシステムを作動させているものを見つけ、破壊するために。「もとの世界」に戻すために。
俺たちは今、この世界を冒険する。
―――――――――――――――――――――――――――――
「聞いているのか新入りィ!」
ふと顔を上げると、血も真っ青なリーダーが憤怒の表情でこちらを睨み付けている。
「なんでしょ?」
「テメェ、聞いてなかったな?!」
羆に出会ったときの衝撃みたいだ。
「撤退する!あいつを介抱してやってくれ!!」
見ればさっき悲鳴をあげた騎士が、その場でうずくまり唸っている。肩から切られているあたり、早く応急処置をしたほうがよさそうだ。
行こうとした途端、顔面からズチャッ、という音とともに何か張り付いた。
「?????」
「なにやってる?!!」
リーダーの声が聞こえるが顔面になにか張り付いて見えない。とりあえずウロウロしながら
なんとか引っぺがしてみるとスライムだった。しかし次の瞬間、「ソレ」は凶悪な顔に変わる。 しまった・・・っ
瞬間的に木に投げつける。
メリメリメリッ !
その瞬間、スライムが巨大化し
ギャアアアああアア!
奇声を上げる。
静まり返るメンバー。真っ青になるリーダー。「こんなの・・・
「こんなのやってられっかよ――――――――――――――――ッ!」
夕暮れのさなか、悲痛な冒険者の叫び声が今日も響き渡る。
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