ep.2 Loading
ザザザザザザザザァ――――――――――――――――
雨が降り始めたこの駅の名前を俺はしらない。
気がつけば隣に誰かが立っていて、二人してまるで、初めて人を見たかのような表情をした。
「ねえ、誰?」
初めての会話。
緑の髪の少年。が口を開いた。
「ゼロだ。」 応える。
「令(レイ)だよ。」
「なあここがどこかわかるか?」
「わかんない。僕は街路樹を歩いてたんだ。」
「俺は自宅で昼寝。 ってことは俺ら、なんでここにいるんだ?」
「さあ?」
拉致があかない。雨もやまない。
閑古鳥がなくような小さな山の無人駅に、二人っきり。
「ねえ、時刻表がないよ。」
「はあ? っておいおい、ずぶ濡れになるじゃないか!」
袖を引っ張っていく。
「だって、ここにしかないんだもん。」
見渡せど山、山、山・・・・・
影が深くなり、風も肌寒い。
・・・仕方ねェなぁ。
ポケットから携帯型の香(≠タバコ)を取り出すと火をつける。フーッとふきだす。
「いいにおいだね?」
「桜黄桃ミックスブレンド。」
「?」
でも、いつまでもこうしちゃいられない。
夕陽が本格的に傾きはじめている。やばい。
「降りるか?」
「日が暮れちゃうよ」
「熊に襲われるぞ。」
「どっかに隠れようよ。」
意見が合わない。
でも、バラバラになるのは怖すぎる。
ゴ ー ン
鐘が鳴った。
「え?何?」
身構える。
鐘らしいモノなんて何一つないのに。
それは山全体に響いて、谺せずに途切れた。
途端、
「「!!?」」
穴が空いた。空に。
パカっとチャックが開いたようにあいた藍色の空の隙間から、宇宙と星雲が無理やり、押し出してくるように空を割っていく。
「何!?おい、逃げ― !」
しがみついた令が離れない。案外重い。いや、力んでいるのか?
「おい!逃げるんだよ!!」
イライラした調子に香が落ちた。
「嫌だ嫌だ嫌だ!ゼロ!助けてッ!!!」
ダメだ、
仕方ねえ。
グイっと強引に腕を引っ張ると令をおぶる。
ムリゲーに近いが、せめて逃げるくらいしないと。
そうしている間にも、わけのわからない闇と光がせまってくる。
「ははっ、なんだこれ。」
これ、最悪の事態ってやつなのに、なんで笑いしか出てこないんだよ。 つか背中重てぇ。突き飛ばしてやろうか。でも、この涙たれ流してる小動物を置いてくなんて、できるわけねぇし。夢見が悪いのは勘弁だし。
でも涙熱いし鬱陶しいし。足は冷てぇし。笑いは止まらないし。息は苦しいし。
逃れられないし。
寝ても覚めても悪夢かよ。
・・・・・死ぬのか?俺ら。
嫌だ。
ふざけんな。俺の世界くらい俺に決めさせろよ、最期まで。
ふざけんなよ。誰だよこんなことしたの。 誰なんだよ!
「ざっけんなよ・・・・ッ!!」
ああ、でも
来る。
どんどん空から狩られていく。
ああ
無理。ホント、
無音って、こんなに残酷だったかなあ。
―――――――――――――――――――――――
「ん・・・・・」
暑い。シャワシャワとあたりが騒がしい。
セミ、か・・・・?
眼前に青い空と緑が目いっぱいに映り、思わず飛び起きた。ここは、どこかの野原?
いや、村・・・・・?集落か。
ゴソっと音がした。
ああ、
またあいつが隣にいる。
「夢、だったのかなあ?」
とぼけたように起き上がり目をこする。
「おい―」
「あっ!ゼロ!よかっ――」
ザ――――――――――――――――...
瞬間、空が分裂した。
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