48話 亜希菜と付き合った場合。

─俺の名前は春咲勇気。


先日までごく普通の高校生だった。そう、は。



2日前に学園一の美少女と言われている姫乃亜希菜から告白を受け、俺は亜希菜と付き合うことになった。


告白された時も思ったが、彼女は俗に言う“ヤンデレ”じゃないかと俺は思う。


昨日の朝なんかは、帰り道をストーキングしたらしく、家の鍵までピッキングし、俺のベッドに忍び込んでいた。今日なんかは、那菜に勉強を教えていただけで嫉妬され…散々な一日だった。


まぁ、その代わりに今日は図書館で勉強を教えたが。


でも、今日から同棲か…


正直に言うと、めちゃくちゃ怖い。なにせ、同棲するという事は亜希菜と一線を超えてしまうこともありえるからだ。


…てか、亜希菜なら俺の寝込みを襲いそうだな…


「どうしたの、勇気君?」


「い、いや何でもないよ。」


隣を歩いている亜希菜が不思議そうに俺の顔を覗き込んだ。ふわっと亜希菜の髪が揺れる。


思わずドキッとしてしまった。こんなに可愛いんだから仕方ないよな、うん…


待てよ…よくよく考えてみればこんな可愛い子が彼女でそれで同棲するって…こんな事、もう一生ないんじゃないのか…?


そう考えると、俺はどこか気分が楽になった気がする。


「亜希菜」


「?なに?」


「…大好き。」


「っ!?も、もう…急すぎるよ…///ふふ。私も大好きだよ♡」


そう言って、亜希菜は抱きついてくる。俺は亜希菜の頭を撫でてやる。亜希菜は気持ち良さそうに喉を鳴らした。


………いや、猫か!


* * *


家に着き、亜希菜は持ってきた荷物を俺が開いてる部屋に持っていった。


昨日のうちに一応掃除はしたから生活出来る部屋になっている。


「亜希菜、風呂入って来ていいぞ。俺はもう入ったから。」 


「えっ…!?なんで、私と入ってくれなかったんですか!」


「ええ…だって…付き合ったばかりだし…」


亜希菜は先に風呂に入ったことがどうにも納得いかないらしくしばらく駄々をこねていたが、俺が一緒に寝ようと言ったら喜んだ顔をして風呂に入って行った。


亜希菜が風呂を出るまで俺はずっと音ゲーをしていた。


「よし!フルコン完了…」


最高難易度の曲のEXTRAをフルコンして俺は満足そうにスマホを置いた。


「…今度、亜希菜にもやらせてみようかな…」


俺は悪い笑みを浮かべる。と、その時、


「何を、私にやらせるんですか?」


亜希菜が風呂から出て来た。パジャマ姿の亜希菜はいつもの制服姿と比べてとても可愛かった。そして、何よりめちゃくちゃいい匂いがする。


…後、お風呂上がりという事もあり、とてもエロい。


「あぁ、この音ゲーの最高難易度を今フルコンしたんだけど亜希菜にもやってもらいたくて。」


「でも、私ゲームなんてそんなうまくないですよ?」


「大丈夫だから。とりあえずやってみて。」


俺はスマホを渡した。


亜希菜に操作を教える。最初はどことなくぎこちなかったが、段々と操作がうまくなってきていた。そうだ─


にもやらせたいな。」


「え…?誰、ですか?“美春”と“咲来楽”って」


亜希菜が心底驚いたという表情をしていた。


「え、誰って…」

 

俺は説明しようとしたが、そこから言葉が出なかった。


「あれ……?」


「え、勇気君、どうしたんですか!?」


「え…?─あ…」


慌てふためく亜希菜を見て俺は気付いた。何故か、涙を流しているのだ。“美春”と“咲来楽”。この名前には聞き覚えがあった。どこで、と聞かれたら分からないけど…


多分、







俺は高校2年生になった。


亜希菜とは相変わらず倦怠期にもならずラブラブな日々が続いている。

 

でも未だに気になるのは、という人物についてだ。調べたが学校の生徒にはし、幼稚園や小中学校の人の中にもその名前はなく、誰なのか分からないということだ。


でも…


「今が幸せなんだからいっか…」


そう俺は思った。






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