第六章 残酷な運命。

44話 5年後。

咲来楽を誘拐した男を過剰殺戮オーバーキルした俺は裁判で懲役5年の有罪判決となった。当然ながら高校は退学。


刑務所は生まれて初めて行くことになったがさほど嫌な場所ではなかった。


咲来楽の葬式は行われたそうだが、俺は人殺し。行けるはずなどなかった。


面会に来るのは亜希菜か母親ぐらいだと思っていたが、驚いた事に学校の同級生や先生など、たくさんの人が面会に来た。


何故、人殺しなんかに会いに来るのか分からなかった。ふと気になった俺は担任が面会に来た時に訊いてみた。すると…


「これを見て。」


そう言われ、俺はスマホの画面を見せられる。


『廃病院で紅条咲来楽くじょうさくら(15才)を強姦し、死亡させたとされる山田勝志やまだかつし(49才)を春咲勇気はるさきゆうき容疑者(16才)が殺害したとして逮捕した。しかし、取り調べによると亡くなった咲来楽さんは義妹で、帰りが遅く心配した春咲容疑者が電話をかけると山田勝志が誘拐した事が判明。警察に言ったらすぐに犯す、と脅され春咲容疑者は咲来楽さんに付けてたGPSを辿って自力で居場所を特定し突入するもすでに咲来楽さんは亡くなっていて怒りを抑えきれずそばにあったパイプ椅子で殴り殺しにしたということだった。春咲容疑者のした事は許されないことであるが、見方によっては大切な義妹を見ず知らずの男にめちゃくちゃにされて殺されたため、義妹の無念を晴らすための仇討ちとも取れる。元々は男が悪いこともあってか、春咲容疑者には懲役5年の服役となった。』


そう書かれていた。


「これは…」


その記事は炎上していた。コメント欄は荒れていて決まって必ず、


『春咲勇気は悪くない。悪いのは年下に欲情したこのクソ男。』


『義妹のためにやったなら間違ってると思うけど、自分が同じ立場なら同じことをやってたと思う。』


などと俺に関しては炎上していないが、男はかなり炎上していた。


「分かった?みんな春咲君の味方なのよ。確かにあなたは過ちを冒してしまった。でも、。それは本来許されるはずじゃないけど…世間はあなたの味方をしてくれている。」


俺は先生の言葉に涙を流す。今の俺にとってその言葉は優しく俺を包み込んでくれるような感覚になったからだ。


それから5年。俺はきちんと服役し、出所した。


歩いていると人がこっちに向かって走って来ているのが見えた。


その人は俺のよく知る人物だった。俺は苦笑し、走り出す。


そしてその人を抱きしめる。


大切な彼女、亜希菜を。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る