43話 純粋な怒り。
俺は診療室の扉を思い切り開いた。
「さく─」
しかし、俺は室内の光景に絶句する。確かに咲来楽はいた。というより、倒れていた。…裸で精液まみれになりながら。
「なんだよ、もう来ちまったのかよ…もっと遅くても良かったのによぉ」
男は不機嫌そうに言って、咲来楽の腟内から自分の性器を抜いた。
「………………」
「ほら、そこにいるだろ?返してやるよ。…まぁ、もう
…
「…違うだろ、お前が!
気付くと俺は怒声を上げていた。男は俺の行動に一瞬目を丸くしたがすぐにバカにしたように高らかに笑った。
「
「………は?」
この男は今なんて言った?
俺は自然と拳を握っていた。…俺はもう一度変り果てた彼女を見る。
…もう動かない大切な人。
彼女の最後に聴いた言葉は、壊れたモノだった。
男は着替えていた。…こんなクズなら…
俺は近くにあったパイプ椅子を持ち上げると、男に向かって振り下ろす。
「っ!」
「っ!?」
しかし、男はすんでの所で避ける。しかし、ズボンを履いてる途中だったのでよろけていた。
俺は、一旦パイプ椅子を投げすて、走って男の所に行く。
そして、男の金○の位置を狙い思いきり蹴った。
「あ”ぁ”っ!?!?」
男はその場にうずくまる。俺は先程投げ捨てたパイプ椅子を再び手に取り男に振り下ろす。
男は苦痛の悲鳴を上げていたが、俺は無視して振り下ろし続ける。
咲来楽は…咲来楽は、もっと辛い思いをしたんだ。“初めて”だってこんな男に奪われて…
咲来楽の怒りに変わって俺が裁きを下す。
* * *
「はぁ…はぁ…っ…」
男が動かなくなった所でパイプ椅子も壊れた。…男は血の海に沈んでいた。
「ふ…ははは…やったぞ…仇は取ったぞ…」
言いながら俺は泣いていた。何故だかわからない。
─そりゃそうだろ。咲来楽のためと言ってやってても実際は自分のためなんだからさ。
心の中の俺が言う。
うるさい、そんなのは分かってる。…俺が今からやるべきことも…
俺はスマホを取り出して、電話をかけた。
「もしもし─
俺は事情を素早く説明し、電話を切る。そしてもう一人に電話を掛ける。
「もしもし、亜希菜?」
『勇気君!見つかったの?』
亜希菜は期待の声で言う。…だけど…
「見つかった…けど、あの男に壊されてた。」
『えっ…じゃあ咲来楽ちゃんは…』
「それで、俺達は、しばらく
『えっ…?』
「殺しちゃったんだよ、誘拐犯を。怒りに身を任せてな。多分捕まる。だから警察も呼んだ。」
『そんな…』
「ごめんな………またな。」
『待っ─』
ブツッ…
俺は電話を切ると、その場に座り込んだ。
「…俺の青春もここで終わりだな。」
過剰な程この男を痛めつけて殺した。懲役は免れないだろう。
程なくして、警察がやって来る。俺は改めて事情を説明したあと、手錠を掛けられた。
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