42話 無謀な追跡。

「はぁ…はぁ…っ、くそ…何処だ…」


あれからずっと走り回っていた。策もなく、ただ、無謀に。


─残り、30分。


このままじゃ駄目だ。何か考えなくちゃ…


「俺なら…もし、俺ならどうする?」


俺は犯人の立場になって考える。犯るだけの目的なら、監視カメラを避けるべく、家には連れて行かない。


となると、人気のない路地や廃墟に連れこむのが普通だと思う。 


だが、この街に人気のない路地はない。


「…待てよ、廃墟?」


俺はこの街の廃墟を調べる。検索にヒットしたのは2件。


ここから約、6㎞の所に会社、1㎞の所に小さな医院があった。


そして、GPSが切られた場所を見る。


「─っ!…医院か!」


ここから500m先でGPSは切られていた。この近くで、廃墟はそこしかない。


つまり、咲来楽はそこに囚われているはずだ。


「っ!待ってろ、咲来楽!」


俺は走って、廃墟・鈴木医院の場所へと向かった。


* * *


「っ、はぁっ…はぁ…」


息を切らしながら、なんとか俺は医院までやって来る。


「………………」


耳を澄ませて見る。


ぱちゅん…パン!


「………………っ!」


僅かにだが、何かの音が聞こえた。…水音のようにも聞こえる。


だが、その直後に何かを落としたみたいな物音が聞こえた。


雨漏れだけなら、物が落ちたりはしないはずだ。つまり、誰かがいる。


俺は目の前の扉を開ける。


ギィィィィ…


金属製の扉だったため、嫌な音を立てながら扉は開いた。


「………………」


中は大分荒れ果てていた。フロントにはホコリがたまり、床には虫などが、大量に死んでいた。


正直、廃墟に入るのは怖い。だけど、小さな医院だ。そんなに広くはない。それに…


だ。」


そう、怖くはない。


俺は物音を聞き逃さないように警戒しながら一階のフロアを探索する。


しかし、一階のフロアにはいなかった。となると、二階になるわけだが…


「うっわ…階段大丈夫かよ…」


木製の階段は朽ちかけていてちょっとでも体重をかけただけで崩れてしまいそうだ。


俺は慎重に階段を登ってく。 


ぱちゅん、ぱちゅん


階段を登るにつれ、段々と水音が大きくなってきた。この近くなのか…?


それにしても、この水音はなんだ…?どこか雨漏れしてるのか?それとも水道の蛇口が閉まりきってなくて漏れてるとか…?


どっちも可能性はある。


「─ゔっ…あ”っ」


奥の診療室から、うめき声が聞こえた。この声は咲来楽の物だ!


俺は走って奥の診療室の扉を思い切り開いた。


「さく─」


しかし、俺は室内の光景に絶句することになった。

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