40話 ホラー番組。

久しぶりに学校に登校した俺は現在、夕食を食べ、風呂に入り、亜希菜や咲来楽が寝静まった頃、夏などによくやる心霊番組を一人見ていた。


映像で出てくる心霊動画は、どうも嘘くさく、怖さなど全く持ってなかった。


「はぁ…全然怖くねぇ」


俺はつい、ため息を吐いてしまった。


いやだって、タイトルに、『絶叫!今宵、この恐怖映像に貴方はきっと眠れない』と書いてあるのに全然怖くないんだもん!


眠れなくならねぇじゃん。


そんな事を思いながら見ていると、やがて、番組も後半に差し掛かっていた。


すると司会者が、


『あなたの後ろにもいるかもしれません』


と、言った。俺は笑って、


「ははは。そんな、いるわけ─うわぁっ!?」


後ろを振り返って絶叫を上げてしまった。


「「きゃあ!」」


俺が驚く元凶となった亜希菜と咲来楽は、俺に釣られて声をあげる。


「な、何やってんだよ!びっくりしたじゃんか!」


俺の真後ろで、笑顔で息を殺して佇まれたら驚くに決まってるだろ…


「え〜と…」


「その…」


亜希菜と咲来楽は、急にもじもじしだす。…というか、何か焦ってるような…


「何しようとしてたんだ…?」


俺がそう言うと、咲来楽がおずおずと喋りだす。


「…お兄ちゃんに怖がってもらってあわよくば、一緒に寝ようと…」


とんでもない爆弾発言が暴露されてしまった。


「はぁ…そんな事なら言えば寝てやるよ。」


俺も爆弾発言をかます。


「「えっ!ほんと!?」」


そりゃそうなりますよね、あなた達、俺のこと大好きだもんね…


「あ、ああ。………ん?」


亜希菜達の後ろ。開いたリビングの扉の奥に人影が見えた気がした。


俺は咄嗟にその人影の見えた所へ駆け出してしまう。


「っ、気のせいか…?いや、多分、あれは…」


「勇気君、どうしたの?」


「お兄ちゃん、どうしたの?」


亜希菜と咲来楽が心配そうにこちらを見る。


その後ろに、また人影が現れる。


「っ!」


ばっちりと、目が合う。


その人影は亜希菜と咲来楽、そして俺を見たあと、安心したように笑い、ゆっくりと消えていった。


「…いや、何でもない。じゃあ、寝るか。」


俺はそう言って、自分の部屋に向かう。その途中、


………見に来てくれたんだな。俺が大丈夫か。そして、亜希菜達の事も。


ありがとうな。


…美春。




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