39話 久しぶりの学校。

10/3


「亜希菜、咲来楽、先に行ってるぞ。」


「うん、気をつけてね?」


「うん、お兄ちゃん、気をつけてね?」


亜希菜と咲来楽にそう言われる。…美春の死があったばかりだからだろう。俺もそこは気をつけて行くつもりだ。


「あぁ。分かってる…」


ガチャッ…


玄関の扉を開け、学校に向かって歩を進める。


「………………」


美春の家を訪れ、雪子さんに、慰めてもらってから、俺は前の自分を取り戻しつつあった。


美春だって、こんな俺を見たくないだろうに…


美春のためと言っていたのなら、そこに気づくべきだった。


「…大分休んじゃったな…いや、一週間ぐらいか?」


そんなことを考えていると、学校が見えてくる。久しぶりの学校だ。何度も見ているのに、なんだか懐かしい気持ちになる。


「─おはよう。」


「……!おはようございます。」


校門に立っていた教師に挨拶をされ、俺も返す。


そのまま下駄箱へ向かい、自分の上靴を履き、教室へ向かう。


「………………」


イヤホン(曲を聴いている)をしながら廊下を歩く。何人かの生徒とすれ違う。


その何人の中には驚いたり、素通りしてく奴もいた。


そして、教室に入る。


「…おはよ〜」


「っ!勇気!」


俺が入るなり、裕斗が即座に反応し、駆け寄る。


「お前…大丈夫かよ?…まぁ、大丈夫だから来たんだな。………で?姫乃さんはどうだった?」


「そうだよ。大丈夫だから来た………お前、今なんて言った?」


俺は裕斗の言った内容におかしな点があることに気付き、問い掛ける。


「え?だから、姫乃さんのは、どうだったって聞いてんだよ。」


あらぁ?なんで知ってんのぉ!?


「なんで知ってんだよ!」


俺がそうツッコむと、


「え?姫乃さんに勇気を。」


「その言葉…っ!お前かぁ!お前がぁッ!」


そう言い、俺は裕斗に掴みかかる。


「まさかっ!ア、ァァァ私はっ…」


まさにイ○クの死亡シーンの再現が終わったところで俺は掴んだまま問い掛ける。


「で、お前が亜希菜を俺に襲わせたんだな?」


「あぁ。だってよ、そうしなきゃ、お前は自殺しようとしてただろ?」


「うぐっ…」


まさに正論だったため、何も言い返せなかった。


「な?だから、俺はちょっと姫乃さんに、助言した。─っ!おい、もう先生来る時間だぜ!」


「えっ─」


俺は慌てて時計を見る。


HR、5分前だった。


俺達は慌てて席についた。


………いつの間にか、亜希菜と咲来楽は来ていた。

もしかしたら俺と裕斗の馬鹿騒ぎを見ていたかもしれない。


そう考えると恥ずかしくなり、俺は机にうつ伏せになった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る