第五章 失ってから気付く新しい生活。
34話 唐突の不幸。
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─突然だった。車が猛スピードで突っ込んできたのは。
車が来る予兆もなかった。突然…そう─
車が、突っ込んできた時も、俺が美春に手を掴まれ、俺と入れ替わって轢かれた事も。すべてが突然だった。
あんなに楽しかったはずの日々が一瞬にして崩れ去る。目を瞑ると美春が笑って楽しい時間が頭の中にフラッシュバックする。
「…………っ」
俺は一人部屋で泣いていた。何も出来なかった自分が嫌になる。
あの時、俺が一歩でも早く、横断歩道を渡っていたら美春が死ぬこともなかった。いや、そもそも─
「…俺が…っ…寄り道じようなんで言わなげれば…っ……美春ば…っ……」
死ななかったのに…
何もやる気が起きない…
明後日には美春の葬式が行われると亜希菜から聞いた。
でも………俺には行く資格なんて、ない…
だって、俺は美春を殺した張本人だから…
美春がいない学校なんて、怖くて行けない。俺は美春が死んだ日から学校に行っていなかった。
このままだと欠席日数がどんどん増えて、俺は留年するだろう。行かなきゃいけない。そう思うけれど、それでも俺の足はこの家から出る事を拒んでいた。
美春の笑顔が、声が、姿が、何度も何度もフラッシュバックして、涙が止まらない。
亜希菜と咲来楽は1階にいるが、ご飯の時にしか顔を合わせていない。
ご飯の時だって俺は何も喋らない。食べ終わると、すぐに部屋に戻る。
美春が死んでからそんな生活を送っていた。
こんな所を美春が見たら、俺を注意するだろうが、そんな注意をしてくれる美春はもういない。
そう、いないんだ。
もう、なんだか疲れた。俺が今から死ねば美春に、また会えるのだろうか…?
いや─
亜希菜と咲来楽を置いて死ぬのは駄目だ。今の俺と同じになるかも知れない。
だけど…
「…俺、疲れたよ。………美春…もう一度でいい。もう一度…過去に戻って、美春に、会いたい。…そうだな、戻ったら今度は美春のやりたいようにさせてやる。俺をどうにかするのならそれでもいい。だからさ………」
俺はもう一度、と言い、
「美春に会いたいよ…なんだってするからさ…なんだっで、ずるからぁっ!」
俺は泣き叫んだ。やがて泣きつかれた俺は意識がまどろみの中に吸い込まれていった。
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