30話 お風呂での事件 中編

「勇気、背中流させて。」


そう言って入ってきたのは美春だった。


「…美春、残念だが、今亜希菜が来て流してくれた所だ。だから明日にでも─」


「体は何回洗ってもいいのよ?洗うにこした事はないわ。…ダメかしら…?」


「………はい…」


くそぅ…美春はズルい…


そんな上目遣いでそんなか弱そうな声を出されたら、断れないよな…





「えーと…何処か痒いところはある?」


背中を洗いながら美春が俺に訊いた。


「いや、特にないぞ。」


俺がそう言うと、美春は『よし』と言った後に、お腹に手を回してきた。


お腹も洗う気なのだ。


「勇気、前向いて?」


「………………」


俺は無言で前を向いた。亜希菜に俺の“オレ”を洗われた時点でもう、恥ずかしさなどなかった。…いや、無くなった。


「じゃあ、失礼して…あ…」


美春は俺の“オレ”を見た途端、顔が赤くなった。亜希菜も顔は赤くはなったが動きが止まることはなく、むしろ、触りたかったのか、とても弄くり回された。……目覚めないようにするのが大変だった。


「…無理に洗わなくていいぞ?」


俺としてはその方がいいし。


「いや、洗う。絶対に洗う。警察が来ようと洗うかな死んでも洗う。」


「そこまで!?」


俺がツッコむとそれが合図と言わんばかりに“オレ”を洗い始める。


「…ッ!」


洗い方がぎこちないせいか、“オレ”が目覚めかけている。


俺は頭の中にゴリゴリのマッチョを思い浮かべ、今、美春に洗われているという事実をゴリゴリのマッチョに、洗われていると誤認識させる。あ、どんどん萎えてく。これ、意外と正解だな。





「これで洗い終わったわね、じゃあ私は出るね。」


「ああ。ありがとな」


俺がそう言うと、美春はニコリと笑い、お風呂場を出ていく。

 



─さて、今度こそ湯船に…


ガララッ…


再び扉が開く。


…この流れで行くとまさか…


「お兄ちゃん、お背中お流しします♪」


やはり、というべきなのか?咲来楽がそこにいた。

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