23話 諦めない妹。


「はい!コレで同棲は大丈夫だな。俺は帰るぜ。」


そう言うと、裕斗は早足に家を去っていこうとした。


「裕斗!ありがとね。」


「裕斗君!ありがとうございました。」


すかさず、亜希菜と美春がお礼の言葉を投げかけた。俺もなにか言わないといけない。今回も助けられたんだから。


「裕斗…今回もすまなかった!でも助かったありがとな。」


裕斗から返事が返ってくることはなかった。その代わり…


ピタッ…


と、に後ろから抱きしめられる。それと同時に首筋にヒヤッとした冷たい感触…


「っ!アンタ!一体何を!」


「黙って!これ以上近づくと、お兄ちゃんが大変なことになるよ!」


そう言って、俺の首元にあてがわれたをちらつかせる。


さすがの美春も、それには怯んだ。


「あなた達はそこで見てなさい!」


そう言うと、咲来楽は再び俺のズボンを下ろそうとした。…もちろんナイフを片手にいつでも刺せるような体制で。

亜希菜と美春は何も出来ずにそこに立ち尽くしていた。


(…はぁ…やるか)


「お兄ちゃん、待ってね?今、気持ちよくしてあげるから♡」


そして、パンツを下げようとして─

俺は咲来楽の手首を掴んだ。…ナイフを持っている方の手首を。


「お兄ちゃん?ナニしてるの?離して?」


咲来楽は俺の手を振りほどこうと動かす。その時、持ってたナイフが俺の手を傷つける。

だが、それでも俺は手を離さなかった。逆に“痛み”を利用し更に力を込める。


そして、手首の骨をグリグリと力を入れてイジる。


「い”っ!?」


それを数分繰り返すと、ナイフがポトリと落ちた。

その瞬間俺はナイフを亜希菜と美春の所へ転がした。


亜希菜がナイフを拾うのを確認し、咲来楽の手首を離し、俺は素早く後ろに下がる。…ズボンを履きながら。


「痛った…」


そう呟きながら咲来楽が立ち上がる。俺が身構えようとした時─


「待ちなさい。」


美春が咲来楽が持っていたナイフを咲来楽に突きつけて言った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る