20話 取られた勇気。
「はい、じゃあ、荷物はこれだけだよね?さ、早く出てってね。」
咲来楽ちゃんにそう言われ、私と美春ちゃんは追い出される形で荷物を持って勇気君の家を出た。
「…亜希菜どうする?勇気取られちゃったけど…」
美春ちゃんが、か弱さそうな声で私に聞いてきた。
「…どうしようね…とりあえず、今日は自分の家に帰るしかないよね…」
私がそう答えると、美春ちゃんは俯いた。
…正直、勇気君と離れるのは辛い。それは美春ちゃんだって一緒のはずだ。
…学校で他の女と話していい代わりに勇気君を家で独占する。というのがGW明けに裕斗君に約束させられた条件。
しかし、もうそれは出来ない。
紅条咲来楽という女が現れたせいだ。
厄介なことに義理の妹という羨ましい立ち位置。あの反応を見るに、勇気君が好きなんだと思う。だって私達と同じ“目”をしてるから。
「美春ちゃん。作戦を練って勇気君との同棲を取り戻そう!」
「うん…それは分かってるケド…勇気の弱みを握られてる。」
そう─
勇気君は母親には反対されるからという理由で私達との同棲は言ってなかった。私達に気を遣ってくれたんだと思う。
「そうだね…今の私達は何を言ってもヤられる。となると唯一頼りになる人が必要…私達より怪しまれず、脅しにも怯まない人物…」
私は彼を思い浮かべる。かつて自分達に一泡吹かせたあの少年を。
「…裕斗しかいないわね。」
そう、宮月裕斗君。彼ならもしかしたら…
そう思ったとき美春ちゃんが電柱の影に向かって叫んだ。
「こら?いるんでしょう?出て来なさい。私達としては助かるんだけど…?」
そう美春ちゃんが言うと、電柱の影から
「あはは…バレてたか…」
「…どうして?」
私は驚きを隠せないでいた。いつ、隠れたのだろう。というか、つけられていた事にも気付けなかった。
「…紅条咲来楽。そして、厄介な事に勇気の妹。さっき、教室に俺も残ってたんだ。一部始終は聞いている。」
「だったら…!」
私は期待を込めた眼差しを裕斗君に送った。それは美春ちゃんも同じようだった。
しかし、次に裕斗の口から発した言葉は予想を覆すものだった。
「…いや、
裕斗君は、そう答えた。
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