19話 彼女達と妹。
「どういうことですか?勇気君。」
「どういうこと?勇気。」
二人は俺達の前に立ちふさがった。その目は驚くほど色がなく、真っ黒な瞳をしていた。
「さっき話を聞いてただろう?会話の通り妹が出来た。当然、一緒に住む事になる。そこは大丈夫だよな?」
俺が訊くと、二人は声を揃えて言った。…まるで練習してきたみたいに。
「「私達はどうなるの?」どうなるんですか?」
「…どうなるって、どういうこと?」
そこで、ずっと静かだった咲来楽が口を挟む。
「ああ、言ってなかったな。俺達は同棲してるんだ。だから咲来楽も一緒に住む事になる。」
俺がそう言うと、亜希菜と美春の二人はほっとしたのか、胸をなでおろした。しかし、それもつかの間。
「…出て行ってください。」
「「「は?」」」
咲来楽の発言に俺達は声を合わせて聞き返してしまう。
理解ができなかったからだ。
「その家に私が住むから貴女達は出て行って。」
咲来楽の口から冷たい言葉が放たれる。しかし、それに怯むことなく美春が反発する。
「なんで、貴女にソレを言われなきゃいけないの?言われる筋合いがないわ。」
「そう…じゃあ、お義母さんに、聞いてみますね。」
(まずい。それだけはダメだ。)
俺は焦り、気付いたときにはポケットからスマホを取り出そうとする咲来楽の腕を掴んでいた。
「それだけは…やめてくれ。」
「勇気!どうして?電話をすれば…」
「そうですよ。電話してもらえれば─」
美春がそう言い、亜希菜もそれに便乗する。
「─ダメなんだ。」
俺は亜希菜の言葉を遮った。
「…どうしてですか?」
亜希菜が顔を下に向け、声を震わせて聞いてくる。…恐らく、涙をこらえているのだろう。
「…悪い。俺は母さんに亜希菜と美春と同棲してる事を
「「えっ…!?」」
二人は俺の告白に驚愕していた。
「………今日で同棲は終わりだ…荷物持ったら自分の家に帰ってくれ。…………咲来楽、この事は母さんに言わないでくれ。」
俺がそう言うと、咲来楽は、にっこりと笑い、
「うん♪もちろんだよ。…あっ、でも二人の事を今後、家に入れたりしたらお義母さんに言うからね?…まぁ、荷物を持ってくのに入るのはしょうがないけどね。それ以降だよ?」
「「っ!…」」
二人は苦虫を噛み潰したような表情になる。
「じゃあ、帰ろう♪お兄ちゃん。」
咲来楽が俺の手を取って歩き始める。
「……二人共ごめん。じゃあ、また明日…」
俺は絶望的な表情のままの二人に別れの挨拶をして、
「………はぁ…一難去ってまた一難か…。ドンだけ悪運が強いんだよ、勇気は…」
その光景を見ていた少年はそう呟いた。
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