番外編 夏休み

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「違う!ここはこの公式を使うんだ!」


俺は現在、自宅にて怒声を上げていた。亜希菜と美春に。


「うぅ…ここは、こうして…あぁ…!もうわかりません…」


「それには私も同意。……ゆうきぃ…もっと優しく教えてよ…」


美春は上目遣いで見上げてくるが、無視する。


「というか、なんで自分の家でやらなかったんだ!一ヶ月あったんだぞ!?」


俺が怒声を上げている理由…それは─


みんな大嫌い、“夏休みの宿題”だった。


桜ヶ岡高校は、7/26から夏休みに入った。期間は7/26〜9/1までの一ヶ月間。当然、宿題(課題)も出る。


同棲してる為、俺の責任だ、と言われれば何も反論できない。が、お盆などを挟むため、彼女らの親が夏休み中は帰ってきなさいと、言われた為、夏休み中は、二人共大人しく家に謹慎─もとい、帰省していた。


…まぁ、同棲を許す親も親だが…


それはともかく、時間が一ヶ月間あった。それなのに…


「なんで、こんなに課題が溜まってるんだよ!」


俺がそう言うと二人はビクッ、と肩を揺らした。


はぁ、とため息を付き、俺は二人の前に座った。


「二人共、今夜は寝かせないからな?(にこ)」


─ゾクゾクッ。


亜希菜と美春は背筋が凍った。普段の亜希菜と美春ならその言葉に喜んでいただろう。しかし、問題集を手にそんなことを言われれば、二人でなくとも恐怖でしかないだろう。


そして、二人は勇気に見守られながら、徹夜し─


終わらなかった。


始業式の日、二人は担任をおど─こほん。…説得して、提出期限を伸ばしてもらったんだそう。

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