16話 懐かしい記憶。

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「…はは…懐かしいな…本当に。」


俺は5年前の記憶を思い出していた。亜希菜と美春と付き合って楽しかった日々を。


「そういえば…」


アイツは…裕斗は元気だろうか…?


高校を卒業して以来、裕斗とは会っていない。かつて、あの二人を論破し、更には束縛を軽くするという、普通はありえない偉業を達成したすごいやつだ。


アイツのことだ。きっと達者でやっているのだろう。


…最後に会っておけばよかったな…………いや、会っていたら自殺をしようと思っていることがバレていただろう。

アイツは妙なところで勘が鋭いからな…


「本当に………今、何時だ?」


俺は呟いて腕時計を見ると、『PM:9:30』だった。


随分と長い時間、回想にふけっていたようだ。


「…死にたくないのか…?…はやく二人に…亜希菜と美春に会いたいはずなのに…」


俺がそう言うと、『まだだ。』と心の中の自分が呟いた。


…そうか。まだすべての記憶を辿っていないか…


「…裕斗の偉業のあとは………あっ…ふ、ははは…そうだ、そうだ。アイツが俺たちの前に現れたんだったな…」


そう言って目を瞑ると5年前の夏休み明けの始業式を思い出す。

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