10話 親友の為に。


「任されたぜ。親友の為に俺も人肌脱ぐぜ。」


俺はそう言って、自分の席に戻った。その直後、例の姫乃さんと美春さんが勇気の席へと現れた。


耳を澄ませて聞くと、なんで今日先に行ったの、勇気君、浮気でもしてるんですか、などという言葉が聞こえてきた。

勇気はそれに慌てて答えていた。


(うーん…こりゃヒデェな…先に行っただけで浮気扱いされるのか…姫乃さんはヤバいが…それは美春さんも一緒だ。)


俺は美春さんの事を見て一人震える。


彼女はこの間、“なにか”をして、3組から俺らの2組にのだ。もちろん、それは勇気と一緒にいたいからだろう。


勇気から二人について聞いていたが…まさかここまでのだとは思わなかった。


(イチかバチかなんだよな………コレがもし、二人に通用するのなら…あるいは…)


俺がそんなことを考えていると、先生が入ってきてHR(ホームルーム)が始まった。


* * *


「姫野さんと美春さん。ちょぉっといい?」


俺は4時間目が始まる前に、勇気の席に群がる姫野さんと美春さんに声を掛ける。勇気が心配そうな目で見てくるが、ひとまず無視する。


「何かな?」


「何?」


「二人って勇気と付き合ってるんだよね?だったら本当に勇気が好きか、心理テストをしたいから、勇気と弁当を食べ終わったら屋上へ来てくれないか?」


俺がそう言うと美春さんは俺を睨んで言った。


「なんでアンタなんかにそんなこと─」


「あれ?断っちゃう?自身なくなっちゃった?それとも…怖気づいちゃった?」


俺は少し笑いながら言った。…煽るように。勇気はそれに気付いて『やめろ』とアイコンタクトを送ってきた。

俺は大丈夫だ、とアイコンタクトを送り返す。


「っ、いいわ。その心理テスト受けてたつわ。」


「ええ。私達の愛が本当かその心理テストで証明します。」


「あぁ…。じゃあまた後で。」 


俺は席に戻りながら、心の中で不敵な笑みを浮かべて笑っていた。


(俺とな。第一関門は突破した。後は…俺がしくじらなければ…)


俺は自分に大丈夫だ、と言い聞かせて自分の席に座った。

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