6話 プール旅行〜逆ナンされました〜 前編

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「ねぇねぇ、いいじゃん。彼氏待たせる彼女さんとか放っておきなよ。ね?アタシと行こうよ」


「いや…そういうのいらないんで。」


「え〜、いいじゃん」


(はぁ…めんどくせぇ…)


俺は現在、『ハワイランド・リゾート』という大きなプールで、ギャル(?)に逆ナンされていた。

何故、俺がプールにいるのか。それは2日ほど前に遡る。


* * *


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「え?プール?」


「うん。から“3人”で一緒にいこう?」


「私もこのプール行ってみたいと思ってたのよ。…もちろん勇気は行くわよね?」


俺は唐突に亜希菜と美春からそんなことを告げられた。…美春に限っては少し脅されたような気がしたが…気のせいか…

…ってか待て、当たった…?まさか、あのスーパーの福引か!?


「当たったって…どういう事だ?」


「スーパーの福引で一等の『ハワイランド・リゾート、家族ペア券』が当たったの。しかもこの券、美春ちゃんが当てたんだよ?」


(そんなこと言われたら断れないだろ…しゃーない、行くか…)


「…分かった。行こう。ちょうどゴールデンウィークだしな。」


「そうね。あ、ちなみにだけど、3日分の着替え持ってね?」


美春のその言葉に俺は一瞬固まる。…今なんて言った?


「なんで、着替え…?」


俺がそう言うと、二人は『にこ』っ、と笑った。そして…


「「2泊3日の家族お泊り旅行券だから♪」」


二人は声を重ねてそう言った。…ノリノリで。

…そして俺はこの時は思ってなかったんだ。…まさか自分の貞操が危うくなるなんて…


* * *


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迎えた旅行当日。

俺達は家の戸締まりをしっかりし、鍵を閉め、家をあとにする。


「なんか、と旅行なんて初めてだな。しかもプールだし、楽しみだよ。」


「私もだよ。あっ、そうそう。私の水着姿、とっても可愛いよ?」


「あら、可愛さなら私もあるはずよ?勇気、私達の水着姿に興奮して鼻血とか出さないでよね?」


「出すかっ!」


そんな話をしながら電車に乗る。『ハワイランド・リゾート』へは、2時間で着くことが出来た。


「おぉ。すげぇデカいな。」


学校2つ分くらいの高さとデカさを持つ、この建物が『ハワイランド・リゾート』らしい。

プールがデカいのもあるんだろうが、同時に旅館も備わってるから驚きである。


(まぁ、今はこんなの多いしな。)




「じゃあ、俺は着替え終わったらここで待ってるから。」


更衣室の前に来て俺が言う。


「うん、分かった。…くれぐれも」


そこで、少し間を空け…


「「─浮気しないでね…?」」


二人は声を重ねてそう言った。


「あぁ…。」


そもそもこんな短時間で浮気なんかしたくても出来るか。


………………って思っていたあの時の自分をぶん殴りたい。


「ねぇねぇ、いいじゃん。彼氏待たせる彼女さんとか放っておきなよ。ね?アタシと行こうよ」


「いや…そういうのいらないんで。」


「え〜、いいじゃん」


俺は今、逆ナンされていた。それも俺の嫌いなギャル(?)な奴に。


「あの、俺そういうの困るんですけど?」


「あはは、なにそれ、ウケる。」


「…は?いや、全然ウケないよ。というか早くどっかに行ってくれませんかね?(さっさとどっか行けや。このクソビッチが。)」


 おっと。見た目がギャルだからってクソビッチとか言ってしまった。危ない、危ない。人は見かけで判断しちゃいけないからな。


「怒ってるとこ、可愛い〜。ねぇやっぱお姉さんと─」


「─勇気君?誰?その女?」


と、そこでギャルの言葉を遮り、亜希菜の声が聞こえる。


「!亜希菜!ちょうどいい所に…!…な?彼女も来たからさっさとどっか行ってくれないか?」


「…なんですか、あなたは?」


亜希菜が声のトーンを落としてそう言った。


「え?何って逆ナンしてただけだよw」


その言葉が亜希菜に火を付けた。


「…してただけ?にナンパしときながら?」


「え?い、いや、冗談じゃ〜ん。」


「…冗談?冗談で済むと思っているんですか?ねぇ?どうなんですか!」


亜希菜がそう攻めると今度はギャルが逆ギレした。


「チッ、マジ意味分かんないし。ちょっと遊んだだけじゃん。ソンナ事で嫉妬とかアタオカだね。」


そう言うと、ギャルはどっかに行ってしまった。


「…大丈夫?勇気君?」


亜希菜が心配そうに声をかける。


「あ、あぁ…ありがとな。俺ナンパされたの初めてだよ。俺は絶対にすぐ追い返せるって思ってたけど…無理だったわ…亜希菜が来てくれなかったらまずかったかもな…」


「うん、でもあの|メ|スどうしよっか…美春ちゃんと相談かな…」


ちょっと物騒な言葉が亜希菜から聞こえた気がする…


「い、いや、大丈夫だからそんなこと!むしろ何かして二人が警察のお世話になっちゃうのが嫌だから。」


「勇気君…」


俺がそう言うと、何故か亜希菜は恍惚とした表情になった。





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